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違和感

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 移動しては街に泊り、また昼間は移動する、を繰り返す。

 私とフロラリアがいるので、馬車での移動になってしまう。

 お父様が出してくれた馬車を、ルーカス様とエモンド様が交代で御者をしてくれて、私とフロラリアは乗っているだけ。

 私よくもまあ、旅に出たいなんて言ったものだわ。

 自分で呆れてしまう。

 私ってば体力もろくにないし、どうやって旅するつもりだったのかしら。

 服装に関しては、別に綺麗なドレスにこだわりもないので、一人で着れる前ボタンのワンピース姿だ。

 というか、ズボンは履いたことがない。
 乗馬でも習っておくのだったわ。

 髪も一つにまとめて三つ編みをしているし、湯浴みも一人でできる。

 まぁ、大体はフロラリアが一緒に入って、私の髪や背中を洗ったりするけど。

 食べ物も、別に公爵家で食べていたような食事でなくても問題ない。

 さすがに調理は出来ないけど、食後に紅茶が飲めなくても気にならない。

 むしろ、平民の食事って思ってたより美味しい。
 温かいだけで、食事って美味しいのよね。

 聖女と一応女神がいるから、毒の心配が不要なために、ヴェルザンディ公爵家では温かい食事が出てたけど、基本的に貴族の食事って冷めてるものが主なのよね。

 銀食器を使えば毒に反応するけど、全ての毒に反応するわけじゃないし、純銀の食器って高いから。

 その点、聖女は解毒とか出来るから。
 それに神に属する私には毒は効かないし。

 だから、私が目の前で一口食べて毒の有無を確認する。

 即効性の毒はどうにもならないもの。
 いくら聖女といえど、失われた命は救い上げられない。

 話は逸れたけど、そういう意味合いでも大丈夫だと思っていたのよね。
 体力がないのは頭になかったわ。

「ユースティティア様、少し街の様子が変です。見て参りますので、こちらでお待ちください」

 エモンド様の言葉に、足を止める。
 確かに活気がない。

「お姉様・・・子供がいないわ」

 フロラリアの呟きに、そこにいるはずの姿がほとんどないことに気付いた。

 街を歩く人たちも少ないし、閉まっている商店も多い。

 その上、明るい声をあげているはずの子供たちがいない。

「ルーカス様、エモンド様。一緒に参りましょう。警戒しておく必要がありそうです。聞き込みは二人ペアで。フロラリア、聖女の力を使う前に、私を呼びなさい。良いわね?」

「はい、お姉様」

 聖女は解毒や癒しの力が使えるけど、それはフロラリアの中にある魔力を使うわけだから、無尽蔵ではない。

 それに、原因を探らずに魔法を使えば、救えるものも救えなくなることがある。

 何がこの街に起きているのか。

 私は気を引き締めて、ルーカス様と東に向かって歩き始めた。

 

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