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新たな婚約?

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「あ、あの・・・ユースティティア様。こ、婚約者の件なのですが・・・」

 おずおずと口を開いた国王陛下に、首を傾げる。

 婚約者?
ジュリアーノ様とは婚約破棄が成ったわよね?

「婚約者、ですか?」

「あんな馬鹿を婚約者にしておいてこんなことを申し上げるのは、厚顔無恥だとわかっております。ですが、ジュリアーノとの婚約がなくなったことで、ヴェルザンディ公爵家にはこれから、婚約の申込みが大挙すること間違いないと思われます。ですから、何か対策をしておくべきかと」

「実はね、すでに届いているのよ」

 お母様の言葉に、うーんと唸ってしまう。

 王家から「しばらくは静観するように」とお達しは出してくれていた。

 しかし表面上はそれに従った形を取りながら、婚約申込みの釣書を送って来たり、お茶のお誘いをかけて来たりと、水面下では聖女や、聖女の姉を取り込もうとして競い合っているらしい。

 私が女神であることは、王家や私の家族しか知らないことだから、聖女のフロラリアにあまり能力の低い相手を差し出せないから、私にも来ているということかしらね。

 ヴェルザンディ公爵家相手だから、あまり低い爵位の貴族家は送ってきてないと思うけど。

 伯爵家くらいまでならあるかしらね。

「お会いするのはかまいませんが、どのような方からでしょうか?」

「マクシミリアン王国の残りの公爵家二家のうち、ローイン公爵家が次男を。侯爵家五家のうち、イージス侯爵家が嫡男、エモンド侯爵家が三男、キュリソー侯爵家が次男。伯爵家五家のうち、クルソン伯爵家とコーナン伯爵家が嫡男、ザビエル伯爵家が次男を婚約者として申し込んで来ているわ」

 はぁ。
伯爵家以上十二家のうち七家って、半分以上じゃない。

 しかも嫡男?
絶対に婚約者がいるわよね?

 聖女や聖女の姉と婚約が成るなら、決まっている婚約を解消するつもり?

 私の気持ちが伝わったのだろう。
 
王妃様が眉を下げられて、申し訳なさそうなお顔をされている。

 ちなみに私の隣では、フロラリアが文句を言いたくて仕方なさそうで、でも私に怒られるから我慢していた。

 うん。話が進まないから、ちょっとこのまま我慢していてもらおう。

「その方々、婚約者は?」

「ローイン、エモンド以外は・・・おります」

 王妃様が小さな声で答えた。
私は頷いてお母様に尋ねる。

「そう。ではその二家はフロラリアを?それとも私を?」

「ローイン公爵家はユースティティアを、エモンド侯爵家はフロラリアをよ」

「わかりました。その二家とはお会いしましょう。フロラリアもそのつもりで。それから、陛下。申し上げなくてもよろしいですわね?」

 私の言葉に、国王陛下と王妃様、第一王子殿下は顔をひきつらせた。

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