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番外編:自由に生きたら

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「おじいちゃま、だっこ」

 お父様に手を伸ばしている幼子に、思わず笑みが漏れる。

「シアンは甘えん坊だな。お兄ちゃんなのに」

「あまえんぼ、ちあうもん」

 お父様に抱き上げられながら、頬を膨らます息子の頭を撫でてやる。

「お父様。シアンは本当は私に抱っこして欲しかったのです。でも、私は今エリスを抱いているでしょう?だから我慢して、お父様に抱っこと言ったんですわ」

「そうか。シアンは立派なお兄ちゃんだったんだな。爺様が悪かった。ごめんな」

 お父様にも撫でられて、シアンがくすぐったそうに笑う。

 私は三年前に嫡男シアンを、去年娘のエリスを産んだ。

 まだ甘えたい盛りのシアンが、妹を気遣っているのを見ると、愛しさが募る。

 現在、夫のリュカは王宮にて仕事中だ。

 王太子殿下の側近として、日々頑張っている。

 私はシアンを妊娠したことで、四年前からお父様に侯爵としての仕事を手伝ってもらっている。

 もちろん、出来る限り女侯爵として働いているけど、リュカが王宮勤めということもあり、お父様とお母様には同居してもらっている。

 息子と娘に、寂しい思いをさせないためだ。

「いい子のシアンに、おばあ様がホットケーキを焼いてくれると言ってたぞ」

「ほっちょけーき!」

「良かったわね、シアン」

 ちなみにこのお祖母様とは、リュカの母親である。

 もちろんのこと、リュカの両親とアデラもフローレンス侯爵家で働いてくれている。

 三人も、シアンとエリスの誕生をとても喜んでくれた。

 アデラに至っては、とても若い叔母さんになったことを大喜びしていた。

 アデラの感覚、やっぱりよく分からないわ。

 リュカと歳が離れていたこともあるから、弟や妹が出来た感覚なのかしら。

 とても可愛がってくれているので、問題はない。

「おかしゃま。おとしゃま、もうかえっちぇくりゅ?」

「そうねぇ。シアンがホットケーキ食べてお昼寝した後くらいに帰ってくるかな」

「しあん、おとしゃまとおふりょはいりゅの」

「ふふっ。シアンはお父様のこと好き?」

「うん!しあんね、おとしゃまもおかしゃまもえりしゅもだいしゅき。おじいちゃまもおばあちゃまもすき」

 ああ!
うちの子が天使すぎるわ!

 愛しい旦那様と、可愛い子供たち。
幸せの構図が、目の前にある。

 元婚約者であるウィリアム殿下は、シアンの生まれた年に婚約者と婚姻された。

 マデリーン王国は、フローレンス公爵家が亡命したことで王家の求心力は弱まったけど、何とか存続している。

 別に私には関係のないことなので、どうでも良い。

 ただ、彼が男爵令嬢と恋をしてくれたことで、私は自由を手に入れた。

 そして自由を手に入れたからこそ、今の幸せがある。

「おかしゃま!はやくぅ」

「はい、はい」

 私は、シアンを抱いたお父様のあとを笑いながら追う。幸せを噛みしめながら。


***fin***



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みんなの感想(212件)

agi21
2024.05.04 agi21

主人公が過去を振り返らないしっかりとしていて
見ていて安心感がありとても良かったです。
こういうお話だとよくある誘拐もなかったしスッキリ!
しかしダメな王族多すぎですね…w
最後の方婚約者候補になった家の家名でふきました

みおな
2024.05.04 みおな

最後まで読んでいただきありがとうございます😊
いやもう、笑ける名前にしようと。
だって名前しか出てこない人たちなので(笑)

解除
リコ
2024.05.03 リコ

身分が高い内に愛した婚約者はアスラン。
自由に生きて愛したのは身分の釣り合わなかったリュカ。
とうとう題名通りに、愛した婚約者が物理的に死にましたね😏

みおな
2024.05.03 みおな

身分的な死か、実質的な死か、結構最後まで迷ったのですが送られた国の性質を考えると、実質的な死かな、と。

解除
カメカメ
2024.05.02 カメカメ

アスラン亡くなりましたね…。
一番の裏切りをしたアスラン。ウィリアムは、まーしょうが無いというか…。気楽な女に目移りしたって感じかな。後が悪いけどね。
アスランは最悪な裏切りだからねぇ。
兄の婚約者だし、一回だけと縋られて流されたのは魔が差しただけとしても、関係を続けたのはマズイでしょ。
しかも浮気相手にも婚約者が居て…ダブル不倫だよね。
フランチェスカが元凶だけど、アスランも共犯!今更アイシュに会いたがっても…。
兄の王太子が幸せになって良かった。
モチロン!アイシュが無事に幸せな家族が出来て良かったと心から思います。

みおな
2024.05.03 みおな

実質的な死か最後まで迷ったんですが、送られた国の性質を考えると、実質的な死になりました。
どんな状態でも生きていることが家族の為になるわけではなく、残された家族の身分を考えると、なるべくしてなった結果かもしれません。
残された人たちが幸せになれたことが救いです。

解除

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