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97.全て今更だ〜マデリーン王国国王視点〜

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「・・・」

 言葉が出なかった、

 書き置きひとつ残して、王女と・・・そして側妃が国から出て行った。

 ついでに言えば、王女の婚約者であるシェリエメール帝国の皇子から「ミリア様が」という手紙まで残されていた。

 挙句に側妃が・・・

「ミリアが王女で私のいる意味はありませんので、離縁させていただきます」

 そう言って、離縁状を書いて出て行った。

 確かに側妃を娶ったのは、正妃がウィリアムを産んだ後に子を成せなくなったからだ。

 ウィリアムに何かあった時のが必要だったから、側妃を娶った。

 ミリアは王女だったが、我が国は女性でも爵位を継げるため、問題がなかった。

 ミリアも側妃も、自分の立ち位置を良く理解していて「正妃様」「王太子殿下」と呼ぶものの、仲が決して悪いわけでもなく良好な関係だった。

 だが今思えば、その良好な関係もフローレンス公爵令嬢がいたからなのかもしれない。

 ミリアは彼女を慕っているようだったから。

 そうか。
あの再婚約の件が・・・全てを壊してしまったのだな。

 目の前の数枚の釣書に目を落とす。

 王太子であるウィリアムの婚約者に相応しい令嬢・・・

 伯爵家以上を集めても、だったの四人か。

 この中で、何人が無事に教育を終えるのか。そもそも、王太子の婚約者を受け入れてくれるのか。

 できる限り、王命は使いたくない。

 フローレンス公爵家が亡命したことで、貴族のパワーバランスが崩れている。

 もしも婚約を無理強いして反感を買えば、国の存続自体が危ぶまれる。

 この危機を・・・ウィリアムと王妃は理解しているのだろうか?

 私は王妃のこともウィリアムのことも、決して愚か者ではないと思っている。

 いや、いたと言うべきか。

 浮気をしたこともそうだが、相手が悪すぎた。

 マトモな淑女教育も終えていない令嬢を、という身分で相手をしてどうするのだ。

 私とて人を好きになる気持ちがわからないわけではない。

 だがウィリアムは、王太子だ。

 その利を今まで受けて来たのだから、も果たさなければならないことくらい理解るだろう。

 フローレンス公爵令嬢と婚姻後、子を授かったあと三年も待てば、愛妾として召し上げることもできたというのに。

 いや。
今更なにを言ったところで、どうしようもない。

 この四人には、王太子妃教育を受けてもらおう。

 ウィリアムの卒業までもう僅かだ。

 それまでに、この中の何人が教育を終えることが出来るのか。

 もっと早く、王太子の座をミリアに移すべきだった。

 全て・・・今更だ。

 



 

 

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