95 / 105
95.その頃のマデリーン王国
しおりを挟む
お父様がフローレンス侯爵となり、新しい屋敷に私たちが馴染んだ頃、マデリーン王国の王家は大きく揺れていた。
「ウィリアム殿下に新たな婚約者候補、ね」
国王陛下は、新たな婚約者が王太子妃教育を終えればウィリアム殿下と婚姻を行うことに決めたようだ。
何故、マデリーン王国を離れクライゼン王国でいる私たちがそんな詳細を知っているのかというと・・・
クライゼン王国王太子殿下が、王家の影をマデリーン王国に潜ませているから。
そう。
例の、アスラン殿下とフランチェスカ様の不貞の証拠となった影よ。
彼らを動かす権利は国王陛下にしかないわけだけど、今回私たちフローレンス公爵家が亡命するにあたり、今後の憂いをなくすためにもと影を動かしてくれたの。
マデリーン王国の国王陛下は、そこまで愚かじゃないと思うから、フローレンス公爵家が亡命した時点で私をウィリアム殿下の婚約者に戻すことは諦めると思うけど、ウィリアム殿下と王妃様が・・・ねぇ。
もし、ウィリアム殿下が私のことを好きだと言ったとしても信じられないし、たとえそれが真実だとしても私はウィリアム殿下ではなくリュカが好き。
そして、私を大切には思ってくれていたようだけど、初恋という気持ちを勝手に奪った王妃様にも思うところがある。
まぁ、あの初恋は記憶と同じように私の中から消えてしまったけど。
「それで、ミリア王女殿下は?」
「どうやら婚約者のシェリエメール帝国の第二皇子殿下は、ミリア殿下を王太子にはしたくないみたいだな。おそらくはミリア殿下のお気持ちを汲んでいるのだと思うが」
「ミリア様はご自分が側妃様のお子で、正妃様のお子であるウィリアム殿下が王太子であるのが正当だと思っていらしたものね」
ミリア様は決してウィリアム殿下を『お兄様』とは呼ばなかった。
いつも『王太子殿下』と。
決して正妃様と側妃様は、仲がお悪かったわけじゃない。
だけどもしかしたら、私には分からなかった何かがあったのかもしれない。
ミリア様は自己防衛で、ウィリアム殿下を立てることで自身を守られていたのかも。
「それもあるけれど。アイシュ、貴女がマデリーン王国からいなくなったことで、ミリア王女殿下はマデリーン王国を見限ったのではないかしら。貴女への仕打ちを許す気にならなかったのだとわたくしは思うわ。王女殿下は貴女のことを本当に慕ってくれていたものね」
「私もミリア様のことは、妹のように思っていますわ」
だからこそ、本人が心から望む道を進んで欲しいわ。
ウィリアム殿下が、しっかりとした婚約者を迎えれば、ミリア様が要らぬ責務を背負う必要はないのだから。
「ウィリアム殿下に新たな婚約者候補、ね」
国王陛下は、新たな婚約者が王太子妃教育を終えればウィリアム殿下と婚姻を行うことに決めたようだ。
何故、マデリーン王国を離れクライゼン王国でいる私たちがそんな詳細を知っているのかというと・・・
クライゼン王国王太子殿下が、王家の影をマデリーン王国に潜ませているから。
そう。
例の、アスラン殿下とフランチェスカ様の不貞の証拠となった影よ。
彼らを動かす権利は国王陛下にしかないわけだけど、今回私たちフローレンス公爵家が亡命するにあたり、今後の憂いをなくすためにもと影を動かしてくれたの。
マデリーン王国の国王陛下は、そこまで愚かじゃないと思うから、フローレンス公爵家が亡命した時点で私をウィリアム殿下の婚約者に戻すことは諦めると思うけど、ウィリアム殿下と王妃様が・・・ねぇ。
もし、ウィリアム殿下が私のことを好きだと言ったとしても信じられないし、たとえそれが真実だとしても私はウィリアム殿下ではなくリュカが好き。
そして、私を大切には思ってくれていたようだけど、初恋という気持ちを勝手に奪った王妃様にも思うところがある。
まぁ、あの初恋は記憶と同じように私の中から消えてしまったけど。
「それで、ミリア王女殿下は?」
「どうやら婚約者のシェリエメール帝国の第二皇子殿下は、ミリア殿下を王太子にはしたくないみたいだな。おそらくはミリア殿下のお気持ちを汲んでいるのだと思うが」
「ミリア様はご自分が側妃様のお子で、正妃様のお子であるウィリアム殿下が王太子であるのが正当だと思っていらしたものね」
ミリア様は決してウィリアム殿下を『お兄様』とは呼ばなかった。
いつも『王太子殿下』と。
決して正妃様と側妃様は、仲がお悪かったわけじゃない。
だけどもしかしたら、私には分からなかった何かがあったのかもしれない。
ミリア様は自己防衛で、ウィリアム殿下を立てることで自身を守られていたのかも。
「それもあるけれど。アイシュ、貴女がマデリーン王国からいなくなったことで、ミリア王女殿下はマデリーン王国を見限ったのではないかしら。貴女への仕打ちを許す気にならなかったのだとわたくしは思うわ。王女殿下は貴女のことを本当に慕ってくれていたものね」
「私もミリア様のことは、妹のように思っていますわ」
だからこそ、本人が心から望む道を進んで欲しいわ。
ウィリアム殿下が、しっかりとした婚約者を迎えれば、ミリア様が要らぬ責務を背負う必要はないのだから。
1,165
お気に入りに追加
2,748
あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる