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95.その頃のマデリーン王国
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お父様がフローレンス侯爵となり、新しい屋敷に私たちが馴染んだ頃、マデリーン王国の王家は大きく揺れていた。
「ウィリアム殿下に新たな婚約者候補、ね」
国王陛下は、新たな婚約者が王太子妃教育を終えればウィリアム殿下と婚姻を行うことに決めたようだ。
何故、マデリーン王国を離れクライゼン王国でいる私たちがそんな詳細を知っているのかというと・・・
クライゼン王国王太子殿下が、王家の影をマデリーン王国に潜ませているから。
そう。
例の、アスラン殿下とフランチェスカ様の不貞の証拠となった影よ。
彼らを動かす権利は国王陛下にしかないわけだけど、今回私たちフローレンス公爵家が亡命するにあたり、今後の憂いをなくすためにもと影を動かしてくれたの。
マデリーン王国の国王陛下は、そこまで愚かじゃないと思うから、フローレンス公爵家が亡命した時点で私をウィリアム殿下の婚約者に戻すことは諦めると思うけど、ウィリアム殿下と王妃様が・・・ねぇ。
もし、ウィリアム殿下が私のことを好きだと言ったとしても信じられないし、たとえそれが真実だとしても私はウィリアム殿下ではなくリュカが好き。
そして、私を大切には思ってくれていたようだけど、初恋という気持ちを勝手に奪った王妃様にも思うところがある。
まぁ、あの初恋は記憶と同じように私の中から消えてしまったけど。
「それで、ミリア王女殿下は?」
「どうやら婚約者のシェリエメール帝国の第二皇子殿下は、ミリア殿下を王太子にはしたくないみたいだな。おそらくはミリア殿下のお気持ちを汲んでいるのだと思うが」
「ミリア様はご自分が側妃様のお子で、正妃様のお子であるウィリアム殿下が王太子であるのが正当だと思っていらしたものね」
ミリア様は決してウィリアム殿下を『お兄様』とは呼ばなかった。
いつも『王太子殿下』と。
決して正妃様と側妃様は、仲がお悪かったわけじゃない。
だけどもしかしたら、私には分からなかった何かがあったのかもしれない。
ミリア様は自己防衛で、ウィリアム殿下を立てることで自身を守られていたのかも。
「それもあるけれど。アイシュ、貴女がマデリーン王国からいなくなったことで、ミリア王女殿下はマデリーン王国を見限ったのではないかしら。貴女への仕打ちを許す気にならなかったのだとわたくしは思うわ。王女殿下は貴女のことを本当に慕ってくれていたものね」
「私もミリア様のことは、妹のように思っていますわ」
だからこそ、本人が心から望む道を進んで欲しいわ。
ウィリアム殿下が、しっかりとした婚約者を迎えれば、ミリア様が要らぬ責務を背負う必要はないのだから。
「ウィリアム殿下に新たな婚約者候補、ね」
国王陛下は、新たな婚約者が王太子妃教育を終えればウィリアム殿下と婚姻を行うことに決めたようだ。
何故、マデリーン王国を離れクライゼン王国でいる私たちがそんな詳細を知っているのかというと・・・
クライゼン王国王太子殿下が、王家の影をマデリーン王国に潜ませているから。
そう。
例の、アスラン殿下とフランチェスカ様の不貞の証拠となった影よ。
彼らを動かす権利は国王陛下にしかないわけだけど、今回私たちフローレンス公爵家が亡命するにあたり、今後の憂いをなくすためにもと影を動かしてくれたの。
マデリーン王国の国王陛下は、そこまで愚かじゃないと思うから、フローレンス公爵家が亡命した時点で私をウィリアム殿下の婚約者に戻すことは諦めると思うけど、ウィリアム殿下と王妃様が・・・ねぇ。
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「それで、ミリア王女殿下は?」
「どうやら婚約者のシェリエメール帝国の第二皇子殿下は、ミリア殿下を王太子にはしたくないみたいだな。おそらくはミリア殿下のお気持ちを汲んでいるのだと思うが」
「ミリア様はご自分が側妃様のお子で、正妃様のお子であるウィリアム殿下が王太子であるのが正当だと思っていらしたものね」
ミリア様は決してウィリアム殿下を『お兄様』とは呼ばなかった。
いつも『王太子殿下』と。
決して正妃様と側妃様は、仲がお悪かったわけじゃない。
だけどもしかしたら、私には分からなかった何かがあったのかもしれない。
ミリア様は自己防衛で、ウィリアム殿下を立てることで自身を守られていたのかも。
「それもあるけれど。アイシュ、貴女がマデリーン王国からいなくなったことで、ミリア王女殿下はマデリーン王国を見限ったのではないかしら。貴女への仕打ちを許す気にならなかったのだとわたくしは思うわ。王女殿下は貴女のことを本当に慕ってくれていたものね」
「私もミリア様のことは、妹のように思っていますわ」
だからこそ、本人が心から望む道を進んで欲しいわ。
ウィリアム殿下が、しっかりとした婚約者を迎えれば、ミリア様が要らぬ責務を背負う必要はないのだから。
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