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84.愛する人さえいるならば
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「クライゼン王国に亡命・・・ですか?」
クライゼン王国の国王陛下たちは、アスラン殿下のことをキチンと対応して下さったから信用できるけど、公爵であるお父様が国を捨てるなんて、本当にいいのかしら?
「亡命だなんて、大丈夫ですの?」
「平気よ。むしろあの国に留まっていた方が、ろくな結果にならないわ。領民のことは、他の公爵家に頼んでいるし、そもそもわたくしの可愛いアイシュをなんだと思っているのかしら」
プリプリと怒っているお母様に、苦笑いしてしまう。
確かに、マデリーン王国に留まるのは百害あって一利なしって感じよね。
王妃様だけならともかく、ウィリアム殿下まで再婚約と言っているなら、絶対に近付きたくないわ。
リュカと婚約していたって、既成事実を作られそうだもの。
だけど、ウィリアム殿下ってばあれだけディアナ様のことを好きで不貞までするくらいだったのに、簡単に気持ちが冷めちゃうのね。
「それでお父様はいつこちらに?」
「今、調整中なのよ。付いて来れない使用人は他家への紹介状を書いたりね。それでも二、三日中にマデリーン王国を出ると思うわ。クライゼン王国に寄ってからこちらに来るそうよ」
クライゼン王国の国王陛下たちは、信用できる方々だけど、使用人たちを連れて国を出ようとしてバレたりしないのかしら。
それに、ミリア様は結局どうなさるのかしら?
「ミリア王女殿下は、どうなさるのでしょうか」
「シェリエメール帝国の第二皇子殿下次第というところね。とても優秀らしいから」
「そうですね」
以前お会いした時には、シェリエメールの第二皇子殿下はその気がないとお聞きしたわ。
まぁ、シェリエメール帝国で公爵位をいただく予定らしいから、ミリア様が望まない限りは無理でしょうね。
「アイシュはフローレンス公爵家を継いでくれるつもりだと聞いたけど、良いのよ?リュカと好きに生きれば。一応、クライゼン王国でも爵位は下さるらしいけど、私たちはそれこそ貴女が幸せに暮らしているのなら下位の貴族でもかまわないのだから」
「お母様・・・」
私はかつての婚約者たちには愛されなかったけど、両親にはこんなに愛されている。
お父様もお母様も爵位にこだわってはいなかったし、たとえ男爵となったとしても二人一緒なら慎ましく幸せに生きていくだろう。
そしてそれは、私も同じだ。
リュカさえいてくれれば。リュカと私を愛してくれる両親さえ幸せでいてくれれば、それこそ平民でもかまわない。
クライゼン王国の国王陛下たちは、アスラン殿下のことをキチンと対応して下さったから信用できるけど、公爵であるお父様が国を捨てるなんて、本当にいいのかしら?
「亡命だなんて、大丈夫ですの?」
「平気よ。むしろあの国に留まっていた方が、ろくな結果にならないわ。領民のことは、他の公爵家に頼んでいるし、そもそもわたくしの可愛いアイシュをなんだと思っているのかしら」
プリプリと怒っているお母様に、苦笑いしてしまう。
確かに、マデリーン王国に留まるのは百害あって一利なしって感じよね。
王妃様だけならともかく、ウィリアム殿下まで再婚約と言っているなら、絶対に近付きたくないわ。
リュカと婚約していたって、既成事実を作られそうだもの。
だけど、ウィリアム殿下ってばあれだけディアナ様のことを好きで不貞までするくらいだったのに、簡単に気持ちが冷めちゃうのね。
「それでお父様はいつこちらに?」
「今、調整中なのよ。付いて来れない使用人は他家への紹介状を書いたりね。それでも二、三日中にマデリーン王国を出ると思うわ。クライゼン王国に寄ってからこちらに来るそうよ」
クライゼン王国の国王陛下たちは、信用できる方々だけど、使用人たちを連れて国を出ようとしてバレたりしないのかしら。
それに、ミリア様は結局どうなさるのかしら?
「ミリア王女殿下は、どうなさるのでしょうか」
「シェリエメール帝国の第二皇子殿下次第というところね。とても優秀らしいから」
「そうですね」
以前お会いした時には、シェリエメールの第二皇子殿下はその気がないとお聞きしたわ。
まぁ、シェリエメール帝国で公爵位をいただく予定らしいから、ミリア様が望まない限りは無理でしょうね。
「アイシュはフローレンス公爵家を継いでくれるつもりだと聞いたけど、良いのよ?リュカと好きに生きれば。一応、クライゼン王国でも爵位は下さるらしいけど、私たちはそれこそ貴女が幸せに暮らしているのなら下位の貴族でもかまわないのだから」
「お母様・・・」
私はかつての婚約者たちには愛されなかったけど、両親にはこんなに愛されている。
お父様もお母様も爵位にこだわってはいなかったし、たとえ男爵となったとしても二人一緒なら慎ましく幸せに生きていくだろう。
そしてそれは、私も同じだ。
リュカさえいてくれれば。リュカと私を愛してくれる両親さえ幸せでいてくれれば、それこそ平民でもかまわない。
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