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83.亡命って

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「再婚約って・・・ウィリアム殿下はディアナ・レブン男爵令嬢のことがお好きなのでしょう?」

 そのディアナ様の王太子妃教育が、思うように進んでいないことは聞いているけど。

 王妃様は、だからこそ私を正妃にしようとしていた。

「それがね、殿下も貴女と再婚約すると言い出したのよ」

「は?」

「王太子妃教育がスムーズに進まないことで、レブン嬢との仲が拗れているのよ。それで、貴女との復縁を望んでいるみたい」

 お母様の言葉に、呆れを通り越して幻滅してしまう。

 確かにウィリアム殿下は、私に婚約解消を突きつけて来たわけではない。

 彼はディアナ様との愛と、王太子という立場とで迷い、『浮気』という形のまま私との婚約を継続していた。

 だけど、私はウィリアム殿下が愛情を選ぶと思っていた。

 だって、私と殿下の婚約は最初から政略的なもの。

 自分で言うのもあれだけど、一番王太子妃に相応しい立場の人間だと思う。

 だからこそ生まれながらに婚約者となったのに、それを理解せずにディアナ様と浮気をしたのでしょう?

 いえ、恋をするのは仕方ないのよ。
浮気をしたのが許せないの。

 なのに今更、私との復縁?馬鹿じゃないの?

「はぁ。幻滅しましたわ」

「アスラン殿下との婚約が解消されたことで、陛下もアイシュとの復縁に乗り気になられてね。旦那様が対応に追われているのよ」

「恋を追い求めてくだされば、ここまで呆れたりしませんでしたのに。うんざりですわ」

 そもそも私はリュカのことが好きだから、復縁なんて求められても応えるつもりはないけど。

 でも王家からされれば、臣下の私たちは断れない。

「お父様は大丈夫でしょうか?」

「大丈夫よ。陛下と話し合いながら、の準備も進めているから」

 え?それって大丈夫って言っていいの?
亡命って。

「他の公爵たちと話を詰めてるらしいわ。領民のことがありますからね。国家転覆も考えたけど、王女殿下がいらっしゃるから。シェリエメール帝国の第二皇子殿下なら問題ないし」

「皇子殿下とミリア様が頷かれたら、王太子をすげかえるということですか?」

 ウィリアム殿下の浮気の際にミリア様とはお会いしたけど、シェリエメールの皇子殿下が乗り気じゃなかったみたいなのよね。

「だけど亡命って・・・」

「旦那様が公爵家を捨てて困るのは王家よ。王女殿下が継がれないのなら、マデリーン王国に価値はないわ」

「・・・そうですわね。でも、亡命ってどこに」

「クライゼン王国の国王陛下が受け入れると言って下さったの」

 クライゼン王国の国王陛下たちは、アスラン殿下の処罰も厳しくして下さったから、信用できるけど、揉めたりしないのかしら。

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