私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

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79.求婚されました

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 いきなり、リュカをアンブレラ王国の近衛騎士になんて話が飛び出した。

 え?どういうこと?
リュカは護衛騎士なのに。

「とてもありがたいことですが、あの・・・」

「ああ、違うの。誤解しないでちょうだい。一ヶ月ほどは近衛と一緒に行動してもらうけれど、私が言いたいのはアンブレラ王国王太子の近衛という『役職』があれば、公爵令嬢との婚約もしやすいだろうということなのよ」

 ええと。
周囲がもう、リュカと私の婚約を決定事項として話をすすめてくるのだけど。

 いえ。お気持ちは嬉しいのだけど。
でも、リュカの気持ちを私はまだ聞いていないのよ。

 好かれているかな、とは思うけど、恋愛的な好きじゃないかもしれないし、もしそうだとしても、公爵家に婿入りしたくないかもしれないじゃない。

 多分、そう思ったのがエヴァリーナ様に伝わったのだと思う。

「お母様!イルヴァレーノ様のお考えもあるでしょう。このことはあくまでも案としてお知りしただいておくだけで良いと思いますわ。それよりも!長旅でお疲れになっていると思います。お部屋にご案内しても?」

「え、ええ。そうね。あちらの方も話は終わったみたいだし」

 王妃様の言葉に視線を向けると、リュカたちがこちらに向かって来ているところだった。

「エヴァリーナ姫」

「レオナルド様、お話は終わりましたの?お父様たちがご迷惑をおかけしませんでしたか?」

「ははっ。大丈夫だよ、

 クライゼン王国王太子殿下は、爽やかに笑われるけど、そのというの、何か引っかかるのですけど。

「リュカ?」

 どうしたのかしら?リュカの顔が少し強張っている気がするのだけど。

「リュカ、どうかした?」

「・・・いえ」

 言われたのかしら。
気にはなるけど、聞けないわね。

 その後、エヴァリーナ様に滞在中のお部屋に案内していただき、少し落ち着いた頃、扉をノックする音がした。

「はい」

「俺、です。お嬢様、少しよろしいですか?」

「リュカ?いいわ、入って」

 少しかたい表情のリュカは部屋に入ると、そのまま私の前まで歩み出て跪いた。

「リュカ?」

「・・・本当は、もっと歩み寄って望まれてから言うつもりだったんですが・・・他の誰かにもう奪われるのは我慢ならないですし、後押しもされましたので」

「?」

「アイシュお嬢様。いえ、アイシュ・フローレンス公爵令嬢、貴女のことを心からお慕いしております。俺の妻になってもらえませんか」

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