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75.もしもを想像してみたら

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「あの・・・フローレンス様はイルヴァレーノ様とお付き合いされているのですか?」

 エヴァリーナ王女殿下の問いかけに、私はどう答えていいのか、一瞬固まった。

 私はリュカのことを好きではあるけど、この気持ちはアスラン殿下の時とは違う気がする。

 もちろんウィリアム殿下の時とも違うわ。

 ウィリアム殿下とは生まれた時からの婚約者だったから、好きとか嫌いとかいう感情じゃなかったのよね。

 アスラン殿下の時は、初恋の相手だというのもあって、一緒にいると嬉しかったしドキドキもした。

 ウィリアム殿下との復縁を防げると安心もしたし、第二王子殿下ということもあって公爵家を継げることに安堵もした。

 リュカとは・・・
そのどちらとも違う気がするの。

 上手く言えないんだけど・・・

「リュカは幼い頃からの護衛騎士で、ずっと一緒に育ったのです。リュカと出会った頃すでに私はマデリーン王国の王太子殿下の婚約者でしたから、彼に恋愛感情を持つことはありませんでした。その婚約が解消され、新たにクライゼン王国の第二王子殿下と婚約しましたが、色々あって婚約を解消することになって・・・私はリュカと旅に出ることにしました。まだマデリーン王国に戻らない方がいいということもあったのですが、私は今まで自由に過ごしたことがありませんでしたから、少し・・・羽目を外してみたくなったのです」

「分かりますわ。王族や高位貴族は自由気ままに行動するわけにはいきませんものね」

 あら。本当にご年齢のわりにしっかりとされた方ね。

 ええ。王族であるサウスフォードの王太子殿下や、マデリーンのウィリアム殿下、クライゼンのアスラン殿下、高位貴族のフランチェスカ様の行動は、普通ではあり得ないことよね。

 はぁ。
こう考えると、私ってあり得ない貴族ホイホイなのかしら。

「リュカは・・・リュカのことだけは、信じられるのです。リュカだけは、私を絶対に裏切らないって思えるんです。リュカといろんなものを見て、いろんなものを食べて、いろんなことをすれば、色んなことがあって疲れてしまった私の心も癒させる気がしたというか・・・」

「もし・・・もしもイルヴァレーノ様がフローレンス様を裏切ったら、どうしますか?」

「リュカが私を・・・?」

 想像もつかない。
リュカはいつだって、私のことを考えて行動してくれていたから。

 だけど、そう、リュカが私に好きだと交際してくれと言っておきながら、他にも恋人がいたら?

 私が嫌だと言っても、私に隠れてマデリーンの王家と裏取引をして、私を王家に人身御供に差し出したら?

「生きて・・・いたくないですわ」

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