私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

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66.救いの女神〜王太子付き近衛騎士視点〜

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「ハァ」

 何度目かわからないため息がもれる。

 俺の名前はフレド・メインクーン。

 サウスフォード王国の王太子殿下付きの近衛騎士だ。

 周囲の憧れの職であるにも関わらず、最近の俺はため息が途切れることがない。

 むしろ、王太子殿下付きと決まった時、周囲から同情されたくらいだ。

 我が国は女王制ではないが、間違いなく最高権力者は王妃殿下だ。

 国王陛下は妻である王妃殿下に頭が上がらない。

 噂だが、婚約時代の浮気が原因らしい。

 そして、その王妃殿下の最愛なのが、十七歳になられた嫡子であるヘリオス殿下である。

 王妃殿下に甘やかされ、溺愛されているヘリオス殿下は・・・

 臣下の言葉ではないが、本当に残念な方となってしまった。

 勉強嫌いで、女性好き。
まぁ、剣はほどほどの腕前だが、それでも最低に毛が生えた程度。

 そもそも鍛錬とか努力とかいう言葉は、ヘリオス殿下の辞書にはない。

 そんなヘリオス殿下と、アンブレラ王国第五王女殿下の婚約が決まったのには理由がある。

 アンブレラ王国で災害があり、その資金援助と交換条件で、優秀だと噂の第五王女殿下に婚約者になってもらったのだ。

 ちなみに、他国にも打診したがことごとく断られた・・・らしい。

 その国王陛下の英断を、ヘリオス殿下は全くちっともご理解されていなかった。

 正式な婚約者ができたというのに、女遊びを繰り返す。

 アンブレラ王国は、一夫一妻制でしかも夫にも妻にも貞淑さを求める国だ。

 だから、婚約の時点でその旨を記した契約書を交わしているらしい。

 打診したにも関わらず、浮気をしているとバレたら、我が国有責で婚約破棄となるだろう。

 現在のヘリオス殿下のお気に入りは、平民の少女だ。

 見た目と性格が庇護欲をかき立てるタイプが、ヘリオス殿下のお好みだ。

 アンブレラ王国第五王女殿下は、美女タイプで優秀なだけあって性格も勝気だ。

 ヘリオス殿下の好みから外れているが、そもそも殿下の好みの女性では、殿下を御しながら支えることはできないだろう。

 好きでもない、いやむしろ嫌いだと殿下は言うが、それはアチラの王女殿下も同じことをおっしゃるだろう。

 資金援助のための政略結婚だ。

 の王女殿下が理解ることが、何故我が国の王太子殿下に理解できないのか。

 何度、女遊びをやめてくれと訴えてもヘリオス殿下は聞き届けてくださらない。

 来週に王女殿下が訪問されるというのに、殿下は行動を改めてはくださらない。

 このままでは、我が国は終わりだ。
だが、どうすれば良いのか。

 苦悩する俺だったが、ヘリオス殿下の街歩きの護衛の最中、救いの女神を見つけた。

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