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59.初めての・・・
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どーなつと呼ばれるお菓子を、リュカと並んでいただく。
リュカは全部食べても良いと言ったけど、せっかくだし二人で食べたいわ。
こんなふうに、カフェでもないのに外で食事をするなんて、生まれてから一度もなかった。
貴族って面倒なのよね。
私は特に公爵家の娘だし、王太子殿下の婚約者だったから、余計に人の目があって行動には注意してた。
だから、こうしてリュカと二人で、公爵令嬢という目を気にしないで過ごせるのって、すごく楽しいわ。
リュカが甘いものをあまり得意でないのは知ってるけど、リュカってば四つも買うんだもの。食べてもらわなきゃ、私だけでは残ってしまうわ。
「これ、どうやって食べるのかしら?」
串に刺さってるけど、こんなところにお皿もないしどうすれば良いの?
周囲を見渡すと、先ほどの二人組が近付いて来た。
「あ、あの、代金ありがとうございます!」
「いえ、気にしないで。親切にしていただいたお礼だから。それよりも、これどうやって食べれば良いの?」
「こうやってガブって・・・む、無理ですよね。えっと、手は汚れますけど半分に割ったら・・・」
え?直接口を持っていくの?
隣に立つ男性は、串に付いたどーなつを一口で食べてしまっていた。
え。私、リュカに半分こしましょうと言ったし、私は一口では無理よ。
「え、えとっ、か、紙か何かもらって来ましょうか?」
女性の親切な言葉に、とても嬉しくなる。
打算の感じられない親切って、本当に気持ちいいわ。
ありがたい申し出に、にっこりと微笑んでお礼を言った。
「ありがとう。でも、郷に入れば郷に従えとこの国では言うのでしょう?こ、こう齧ればいいのよね」
「お嬢、無理しなくても・・・」
ハンカチを膝の上に乗せて、クマの耳を齧ろうとしたら、リュカが不安そうに声をかけてくる。
失礼ね!かじるくらいできるわ。
耳先を齧ると、ほんのり甘い生地が口の中に広がった。
「美味しいわ!」
「わー、良かったです!あ、その先に手を洗うところありますから。じゃあ、ありがとうございました!」
「丁寧にありがとう。気をつけてね」
二人組はペコリと頭を下げると、立ち去って行った。
あら。あの二人も手を繋いでいるわ。
ふふっ。私とリュカもあんなふうに見えてたのかしら。
「お嬢、紙をもらって来て半分に割りますよ?」
「いいえ、こうやって食べるのが美味しい気がするわ。それに、ここには私の行動を咎める人はいないもの。はい、リュカ」
もう片方の耳を齧ったあと、リュカに差し出した。
顔を齧るのは、ちょっとかわいそうだから、リュカ食べてね。
リュカは全部食べても良いと言ったけど、せっかくだし二人で食べたいわ。
こんなふうに、カフェでもないのに外で食事をするなんて、生まれてから一度もなかった。
貴族って面倒なのよね。
私は特に公爵家の娘だし、王太子殿下の婚約者だったから、余計に人の目があって行動には注意してた。
だから、こうしてリュカと二人で、公爵令嬢という目を気にしないで過ごせるのって、すごく楽しいわ。
リュカが甘いものをあまり得意でないのは知ってるけど、リュカってば四つも買うんだもの。食べてもらわなきゃ、私だけでは残ってしまうわ。
「これ、どうやって食べるのかしら?」
串に刺さってるけど、こんなところにお皿もないしどうすれば良いの?
周囲を見渡すと、先ほどの二人組が近付いて来た。
「あ、あの、代金ありがとうございます!」
「いえ、気にしないで。親切にしていただいたお礼だから。それよりも、これどうやって食べれば良いの?」
「こうやってガブって・・・む、無理ですよね。えっと、手は汚れますけど半分に割ったら・・・」
え?直接口を持っていくの?
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え。私、リュカに半分こしましょうと言ったし、私は一口では無理よ。
「え、えとっ、か、紙か何かもらって来ましょうか?」
女性の親切な言葉に、とても嬉しくなる。
打算の感じられない親切って、本当に気持ちいいわ。
ありがたい申し出に、にっこりと微笑んでお礼を言った。
「ありがとう。でも、郷に入れば郷に従えとこの国では言うのでしょう?こ、こう齧ればいいのよね」
「お嬢、無理しなくても・・・」
ハンカチを膝の上に乗せて、クマの耳を齧ろうとしたら、リュカが不安そうに声をかけてくる。
失礼ね!かじるくらいできるわ。
耳先を齧ると、ほんのり甘い生地が口の中に広がった。
「美味しいわ!」
「わー、良かったです!あ、その先に手を洗うところありますから。じゃあ、ありがとうございました!」
「丁寧にありがとう。気をつけてね」
二人組はペコリと頭を下げると、立ち去って行った。
あら。あの二人も手を繋いでいるわ。
ふふっ。私とリュカもあんなふうに見えてたのかしら。
「お嬢、紙をもらって来て半分に割りますよ?」
「いいえ、こうやって食べるのが美味しい気がするわ。それに、ここには私の行動を咎める人はいないもの。はい、リュカ」
もう片方の耳を齧ったあと、リュカに差し出した。
顔を齧るのは、ちょっとかわいそうだから、リュカ食べてね。
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