58 / 105
58.魅力的なお誘い〜リュカ視点〜
しおりを挟む
「りゅ、リュカ、あのお店見てみたい」
俺と手を繋いだまま、行列の先に視線を向けるアイシュお嬢様。
その赤く染まった頰に、鼓動が早くなった。
何だこれ。
こんな表情を見たことない。
つられてコッチの顔も赤くなりそうで、慌てて行列の方に視線を向けた。
「随分待ちそうですけど、並ぶの平気ですか?」
「・・・うん、大丈夫」
とりあえずお嬢様の手を引いて、行列の一番後ろに並ぶ。
すぐに俺たちの後ろにも列が出来た。
何の店だ?随分と人気のようだけど。
「あの・・・これ、何の店なんですか?」
俺たちのすぐ後ろに並んだ、恋人らしき二人組に尋ねてみる。
平民らしき二人組の、女性の方が目を丸くする。
「え?知らないで並んでたんですか?ここは、ドーナツ専門店なんですよ。こう、串の先にハート型とか星型とか可愛いドーナツが付いてるんです」
「ドーナツ・・・」
「もしかしてドーナツを知りません?小麦粉で作ったパンみたいなものを揚げた甘いお菓子です。甘いもの苦手でないのなら、オススメですよ」
若い女性は、多分お嬢様が貴族だと気付いたのだろう。
親切に教えてくれた。
「ありがとう。食べてみるわ」
お嬢様が微笑んでお礼を言うと、二人組はニコニコと笑って手を振った。
「親切ね」
「ええ、本当に。美味しいみたいですし、楽しみですね」
「ええ、楽しみだわ」
嬉しそうなお嬢様に、俺も嬉しくなる。
思ってたより行列は早く進み、俺たちの番がやって来た。
金貨より一回り大きい程度の星型やハート型のドーナツとやらは、白や茶色、ピンクやオレンジなど、カラフルな色をしていた。
「まぁ!可愛い!どうしましょう、リュカ。選べないわ」
「あの、すみません、オススメを四つ下さい」
後ろが随分と並んでいるし、俺にもどれがいいのか分からない。
店員におすすめを頼むと、思っていたよりも安値だった。
これは行列ができるわけだ。
貴族がよく買うケーキ店の半額以下だ。
代金を少し多めに出して、店員に後ろの二人組の代金の足しにして欲しいと頼む。
親切にされたことで、お嬢様はとても嬉しそうだった。
お礼をするのは当然だ。
お嬢様の手を引いて、噴水の前のベンチまで進む。
ポケットから出したハンカチを敷き、お嬢様に座ってもらう。
「見て、リュカ。本当に可愛いわ。何味なのかしら?」
白の星型に、ピンクと白の縞模様のハート型、白地に耳がついていて目と鼻を描いた猫らしき顔、茶色地に目鼻の付いたクマらしき顔。
顔型をかじるのか?
可愛いと言いながら顔を?
「お嬢が好きなのを食べてください。全部食べても良いですよ」
「せっかくだもの、半分こしましょう?」
「いや、俺は甘いものは・・・いやいただきます」
半分こは魅力的だ。
俺と手を繋いだまま、行列の先に視線を向けるアイシュお嬢様。
その赤く染まった頰に、鼓動が早くなった。
何だこれ。
こんな表情を見たことない。
つられてコッチの顔も赤くなりそうで、慌てて行列の方に視線を向けた。
「随分待ちそうですけど、並ぶの平気ですか?」
「・・・うん、大丈夫」
とりあえずお嬢様の手を引いて、行列の一番後ろに並ぶ。
すぐに俺たちの後ろにも列が出来た。
何の店だ?随分と人気のようだけど。
「あの・・・これ、何の店なんですか?」
俺たちのすぐ後ろに並んだ、恋人らしき二人組に尋ねてみる。
平民らしき二人組の、女性の方が目を丸くする。
「え?知らないで並んでたんですか?ここは、ドーナツ専門店なんですよ。こう、串の先にハート型とか星型とか可愛いドーナツが付いてるんです」
「ドーナツ・・・」
「もしかしてドーナツを知りません?小麦粉で作ったパンみたいなものを揚げた甘いお菓子です。甘いもの苦手でないのなら、オススメですよ」
若い女性は、多分お嬢様が貴族だと気付いたのだろう。
親切に教えてくれた。
「ありがとう。食べてみるわ」
お嬢様が微笑んでお礼を言うと、二人組はニコニコと笑って手を振った。
「親切ね」
「ええ、本当に。美味しいみたいですし、楽しみですね」
「ええ、楽しみだわ」
嬉しそうなお嬢様に、俺も嬉しくなる。
思ってたより行列は早く進み、俺たちの番がやって来た。
金貨より一回り大きい程度の星型やハート型のドーナツとやらは、白や茶色、ピンクやオレンジなど、カラフルな色をしていた。
「まぁ!可愛い!どうしましょう、リュカ。選べないわ」
「あの、すみません、オススメを四つ下さい」
後ろが随分と並んでいるし、俺にもどれがいいのか分からない。
店員におすすめを頼むと、思っていたよりも安値だった。
これは行列ができるわけだ。
貴族がよく買うケーキ店の半額以下だ。
代金を少し多めに出して、店員に後ろの二人組の代金の足しにして欲しいと頼む。
親切にされたことで、お嬢様はとても嬉しそうだった。
お礼をするのは当然だ。
お嬢様の手を引いて、噴水の前のベンチまで進む。
ポケットから出したハンカチを敷き、お嬢様に座ってもらう。
「見て、リュカ。本当に可愛いわ。何味なのかしら?」
白の星型に、ピンクと白の縞模様のハート型、白地に耳がついていて目と鼻を描いた猫らしき顔、茶色地に目鼻の付いたクマらしき顔。
顔型をかじるのか?
可愛いと言いながら顔を?
「お嬢が好きなのを食べてください。全部食べても良いですよ」
「せっかくだもの、半分こしましょう?」
「いや、俺は甘いものは・・・いやいただきます」
半分こは魅力的だ。
227
お気に入りに追加
2,598
あなたにおすすめの小説
婚約者が知らない女性とキスしてた~従順な婚約者はもう辞めます!~
ともどーも
恋愛
愛する人は、私ではない女性を抱きしめ、淫らな口づけをしていた……。
私はエスメローラ・マルマーダ(18)
マルマーダ伯爵家の娘だ。
オルトハット王国の貴族学院に通っている。
愛する婚約者・ブラント・エヴァンス公爵令息とは七歳の時に出会い、私は一目で恋に落ちた。
大好きだった……。
ブラントは成績優秀、文武両道、眉目秀麗とみんなの人気者で、たくさんの女の子と噂が絶えなかった。
『あなたを一番に愛しています』
その誓いを信じていたのに……。
もう……信じられない。
だから、もう辞めます!!
全34話です。
執筆は完了しているので、手直しが済み次第順次投稿していきます。
設定はゆるいです💦
楽しんで頂ければ幸いです!
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる