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56.差を見せつけてやりたかった〜フランチェスカ視点〜

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 アスランに連れられてやってきたフローレンス公爵令嬢は・・・

 容姿は優れてるし、王太子の婚約者だっただけあって、所作も綺麗だった。

 わたくしには劣るけど。

 男性の護衛と幼い侍女を連れていて、アスランはその護衛の男性とも仲は良さげで・・・

 アスランがわたくしを兄の婚約者で友人だと紹介した。

 なんだか無性に、イライラするわ。

 そうだ。友人として思い切り信用させて・・・
 その後にアスランを奪ってやればどうかしら?

 友人と婚約者に捨てられたら・・・
ふふっ。あの取り澄ました顔が屈辱に歪むのかしら。

 アスランの性格はよくわかってるわ。

 情に脆いし、押しに弱い。
だから、涙ながらに縋れば簡単に落とせるはず。

 少しずつ、少しずつ、信用を勝ち取るように、アイシュを信用させていく。

 彼女は生まれながらの王太子の婚約者だったこともあって、マデリーン王国では友人と呼べる人間はいなかったらしい。

 だからなのか、本当にわたくしのことを心から信じているみたいだった。

 であるアスランのことを名前で呼び捨てにしても、その腕に触れても、全く気にしない。

 信じすぎじゃないの?こんなんでよく王太子の婚約者なんてやって来れたわね。

 そんな中、レオナルド様が公務で留守の間に同時にアイシュも王都から離れることになった。

 婚約解消した王太子との件で揉めているらしい。

 これがチャンスだと思った。

 まさか、レオナルド様がわたくしとアスランのことを疑っていて、この公務が罠だなんて考えもしなかった。

「違うんです!レオナルド様っ!わたくしはっ!わたくしはレオナルド様のことが本当に好きなんです!」

「僕を好きなのに、僕の弟にずっと好きだったのと言って体を開くんだね。君の好きは随分と軽い」

「ち、違・・・」

「嘘を重ねても、王家の影が報告している。それに君がアスランの部屋から出てくるのは僕自身が目撃している」

 冷たく言い放たれて、とりつく島もない。

 視線を彷徨わせると、アスランがアイシュに縋り付いていた。

「アイシュ!君のことを本当に愛しているんだ!お願いだ!」

「アイシュ。わたくしたちお友達でしょう?お願い。許して」

 どれだけアスランと二人で謝っても、アイシュは表情ひとつ変えずに、ことごとく否定してくる。

 どうしてよ?
アスランは初恋なんでしょう?わたくしは初めての友達なんでしょう?

 このままじゃ、わたくしもアスランも身分剥奪の上、レイホリック聖国に送られるのよ?

 どうしてそんなに平然としてるの?

「アイボリー公爵令嬢様は私のお友達ではないようですから、名前で呼ばないで下さいますか?」

 どうしてよ!
どうして・・・
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