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51.お世話になりました

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 アスラン殿下とフランチェスカ様は、今朝早くにレイホリック聖国に向けて移送されて行った。

 いえ、もう殿下でも公爵令嬢でもないわね。

 二人の身分はすでに剥奪されて平民だ。

 彼らの罪は、私と王太子殿下の婚約者を奪い、心を傷つけたこと。

 さすがに王太子殿下の婚約者と不貞をするのは問題よね。

 人道的に正しくないこともあるし、これから王太子殿下の新たな婚約者を探さなければならないことや、私にかかる醜聞も鑑みて、国外追放という形になったのだ。

「改めて、本当に申し訳なかった」

「本当にごめんなさい」

 クライゼン王国国王陛下と王妃殿下の謝罪に、私は頭を下げる。

「いいえ。国王陛下や王妃殿下、王太子殿下に非はありません。幼い子供ではないのです。他に好きな方ができれば、ちゃんと手順を踏めば良かったのです。私が・・・先の婚約者の浮気で婚約解消したことをご存知だったはずなのに、方法を間違ったのはあの二人なのです。ですから謝罪は必要ありません」

「貴女に・・・娘になって欲しかったわ」

「ありがとうございます。よくしていただいて、クライゼン王国での生活はとても楽しかったです」

 国王陛下も王妃殿下も王太子殿下も、それから王宮の使用人の皆様も、本当に優しく良くしてくださった。

 リュカにもアデラにも、優しく接して下さったし、あの二人の裏切りさえなければ楽しい思い出しかない国になっただろう。

「フローレンス嬢はこれからどうするのだ?」

「まだ、マデリーン王国には戻らない方が良さそうなのです。そのこともあって、リュカと共にしばらく他国を旅しようかと考えています」

「うちにこのままいるのは嫌?うちはいてくれて良いのよ?」

 王妃様の言葉に私は首を横に振った。

「いえ。ずっと自由がなかったので、いろんな国を見てみたいのです」

「そう。なら仕方ないわね。でも、マデリーン王国に帰り辛かったらいつでも立ち寄ってちょうだい」

「お心遣い、ありがとうございます」

 色んな国を見て回りたいのは本当。

 マデリーン王国で、ウィリアム殿下の婚約者となったディアナ・レブン男爵令嬢の王太子妃教育が全く進まず、だけど王妃殿下がミリア様が後継になることに頷かれないと聞いたわ。

 ミリア様を嫌いだとか認められないとかではなく、他国の王子が婚約者だから、そこが引っかかっているんだと思うと、、お父様はおっしゃっていた。

 だから、後継問題が落ち着くまでは戻れない。

 私を正妃に、男爵令嬢を側妃か愛妾になんて言われかねないもの。

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