上 下
47 / 105

47.鉄拳制裁?

しおりを挟む
「アスラン、アイボリー公爵令嬢、こちらへ」

 陛下の呼びかけに、アスラン殿下は私に伸ばしかけた手を引っ込めて、仕方なく元の場所である陛下たちの元へと向かった。

 その後ろをフランチェスカ様が付いて行く。

 二人が不貞を始めたのは、私と婚約してからだと聞いた。

 それまでは仲の良い・・・友人だったのかしらね。

 フランチェスカ様は、王太子殿下の何が不満なのかしら?

 お優しくて優秀な方だと聞くわ。
もちろん王太子殿下で、すでに成人されているから、公務はお忙しいだろうけど。

 そんな方と婚約していながら、何故不貞なんて・・・

 そこまで考えて、首を横に振った。

 何故、どうして、と考えても、それは当人同士にしか分からない。

 不貞の理由に、真っ当なものがあるかどうかは別にして、何かしらの理由はあるだろう。

 だが、それはの人間には理解できないものだ。

 そういえば、国王陛下は二人の不貞を証明するつもりなのかしら?

 フランチェスカ様の侍女の証言も、私が二人を見たことも、言い逃れが出来ることだ。

 確定なのは王家の影の方の証言だけど、その影の方は国王陛下以外にお顔を見せることはないと聞く。

 となると、証言しても黒寄りのグレーにしかならないのでは?

 いえ。
別に二人がどうなろうと、正直どうでもいいわ。
 私との婚約さえ解消していただけるなら。

 いくらかの不安を抱えたまま、国王陛下のところへ二人がたどり着くのを見届けた。

 二人がたどり着くと、国王陛下は小さく息を吐いて、いきなりアスラン殿下の頰を殴りつけた。

「ぐぁっ!」

「「「きゃあああああ!」」」

 突然のことに、会場に悲鳴が響き渡る。

 倒れ込んだアスラン殿下に駆け寄ろうとしたフランチェスカ様の手を掴むと、今度は王妃様がその手にしていた扇でフランチェスカ様の頰を打つ。

 アスラン殿下に重なるように、フランチェスカ様も倒れ込む。

 平然とそれを見つめる国王陛下と王妃様、そして王太子殿下。

 周囲の貴族は驚きを隠せず、陛下たちが乱心したのかと慄いている。

 ちなみに・・・
フランチェスカ様のご両親であるアイボリー公爵夫妻は真っ青な顔をしていて、周囲の王宮騎士たちは微動だにしていない。

 ある意味、カオスだわ。

 まさか、いきなり殴りつけるとは思わなかった。
 そして王妃様までもが、手をあげるなんて。

 アイボリー公爵夫妻は、フランチェスカ様たちに手を貸さない約束だと聞いた。

 公爵家を守るか、娘を取るか。

 家を取るわよね、当然。
罪を犯してないなら、親の心情としては娘を助けたいでしょうけど、今回は王家を馬鹿にしたようなものだもの。



しおりを挟む
感想 212

あなたにおすすめの小説

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。 だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。 だって婚約者は私なのだから。 いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣) 小説家になろうさんにも時差投稿します。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

処理中です...