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43.百年の恋も冷める

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 王太子殿下とお話した日から、アスラン殿下との交流を避けている。

 感冒にかかったので、うつしてはいけないからと、フランチェスカ様にもお見舞いはお断りした。

 ずっと王宮でお世話になっているから、そんな手がまかり通るのかと不安だったけど、王太子殿下と国王陛下が王宮侍女たちに手を回してくれていた。

 おかげでお見舞いのお花は届くけれど、顔を合わせることはなく時間が過ぎていく。

 私を送ってきてくれた護衛と侍女はマデリーン王国に帰国してもらったので、王太子殿下にお願いして侍女を貸していただいた。

 陛下と王太子殿下が選ばれた侍女はとても優秀で、何度かアスラン殿下がやって来たみたいだけど、完全に拒絶してくれた。

 パーティーに向けて、私には青色に、私の髪色と同じ銀の刺繍を施したドレスが準備された。

 青色にしたのは、アスラン殿下のお色でないものにした、ということらしい。

 蜂蜜色にエメラルドのレースがあしらわれた、アスラン殿下のお色のドレスも届いた。

 アスラン殿下が贈ってくれたらしい。

 申し訳ないけど、二度とそのお色のドレスを着ることはない。

 フランチェスカ様に贈りたいくらいだわ。

 と言ったら、侍女たちがサイズの手直しをしてフランチェスカ様のところへ持って行ったらしい。

 蜂蜜色は王太子殿下のお色でもあるけど、瞳はアスラン殿下よりも青よりなのよね。気付かれないのかしら?

 エスコートに関しては、国王陛下が御触れを出してくれたので、アスラン殿下からは「エスコートは大丈夫か?」と問い合わせがあった。

 私の家族はマデリーン王国にいるから。

 なので、許可を取ったので護衛騎士のエスコートで入場すると伝えた。

 もちろん、アスラン殿下もリュカのことは知っているので、納得したようだ。

 何故今回、家族での入場なのか、不審に思っているみたいだけど、国王陛下が「家族の大切さを認識させるためだ」と言われたらしい。

 確かに婚約者が出来てしまうと、家族のエスコートでパーティーに出ることはほとんどない。

 本来の意図ではないけれど、家族との交流をとれるのって大切だと思うわ。

 今回・・・
こんなことになって、改めて思う。

 ウィリアム殿下に恋心はなかったけど、婚約者としてお互いに大切にし合えて尊敬できる存在でありたいと考えていた。

 それを、ウィリアム殿下が男爵令嬢に恋をしたという形で裏切られた。

 いえ、好きになるのは仕方ないのよ。
 ただ、私との婚約を解消してからにして欲しかったわ。

 まぁ、王妃様のこともあるから、ウィリアム殿下には多少の同情はするし、恨んではいないわ。

 でも、アスラン殿下の件は駄目。

 私が初恋を忘れていた云々はともかく、あちらから求婚しておいて、こともあろうにご自身のお兄様の婚約者と不貞!

 百年の恋も冷めるって、こういうことを言うんだわ。
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