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27.私が忘れたのは初恋のようです

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「ということなのです」

 リュカの言葉を聞いた後、両親とアスラン様に夢の話を全てお話した。

 リュカが覚えているということは、あれは夢でなく過去にあったことなのだと思えたから。

 私がいるだけで、あったこと。

 そう判断して、全てをお話することにしたのだ。

 お父様とお母様は、私の話を聞いて何か考え込まれていた。

 アスラン様はというと「え?好き?え?」と繰り返している。どうしたのかしら?

「お父様、お母様」

「アイシュ。他に何か覚えているかい?例えばその女性の容姿とか、言葉とか」

 お父様の問いに首を傾げて、頰に手を当てた。

 私に謝罪の言葉を話していた女性。

 黒のフードを深く被っていたから、顔は見ていない。

 ああ、でもそういえば・・・

「お言葉の訛りが、王妃様のお国と同じでしたわ。出さないように気を付けていたみたいですけど、王妃様がいらっしゃらない時に私に謝罪されていて、このお言葉が・・・」

 王妃様は、東にある小国からマデリーン王国に嫁いで来られた。

 その国特有の訛りが、彼女の言葉にあったのだ。

 王妃様もほとんどお言葉に出ることはないけど、たまに感情が昂った時に出ることがあったのと、王妃様の祖国ということで王太子妃教育の中で覚えたのだ。

「・・・やはり、か」

「お父様、何かご存知なのですか?」

「アスラン殿下が国に帰られた直後、王宮勤めの侍女が川に身投げをした。その侍女が王妃様が国から連れてきた者だったことで、私の耳にも入ることになった。自死か事故かと調査されたが、王妃様が侍女が最近元気がなく、何か悩んでいたようだったと発言したことで、自死として片付けられた」

「その方が・・・」

 もしかして、私に記憶を取り戻す種を仕込んだことを王妃様に知られた?

 いえ。王妃様は人を殺すような方ではない。

 ならば、良心の呵責に耐えかねた?

 私の記憶を操作したことで、彼女を責めるつもりはない。

 だって王妃様に命じられたなら、断る選択なんて出来なかったと思うから。

 王妃様に関しても、私を害そうとしたわけではないことは理解している。

 だって王妃様はずっとお優しかった。

 私がアスラン様に恋をしなかったら。ご自身の近くに記憶を弄れる方がいなかったら。

 きっとそんなことはなさらなかった。

 もし、あの方が生きていたとしたら・・・

 ウィリアム殿下の恋心も消してしまったのかしら?

 確かにディアナ・レブン男爵令嬢様は、王太子妃になるには後ろ盾が弱すぎる。

 しかも王太子妃教育どころか、淑女教育にも苦戦していると聞く。

 だけど政略結婚が当たり前の世界で、愛せる方と出会えたのなら、王太子妃になるために死に物狂いで努力されればいいと思う私は・・・

 やっぱり、ウィリアム殿下のことを好きではないのね。
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