私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

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18.ドレスが仕上がって来ました

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 夜会のドレスが出来上がって来た。

 アスラン様のお色であるエメラルド色のドレスは、蜂蜜色のレースが胸元を飾っていて、Aラインのシンプルなデザインだけど裾には繊細な刺繍がされていた。

 素敵。
私は、可愛らしいデザインのドレスは似合わないのよね。

 そういえば、ウィリアム殿下は可愛らしい方が好みだったわ。

 私は男爵令嬢のメイドの方がどんな方は知らないけど、今まで殿下がパーティーで視線を向けていたご令嬢は、可愛い感じの方ばかりだった。

 好みに関しては、仕方ないと思うのよ。
 私だって、ウィリアム殿下やアスラン殿下のようにスラリとした方よりも、細身だけど筋肉はちゃんと付いている感じの方が好きだもの。

 あくまでも好みの問題だし、好みの方と好きになる方が同じとは限らないしね。

「素敵なドレスね。アイシュに似合うわ。アスラン殿下はセンスがいいわね」

「はい。とても気に入りました」

「ネックレスとイヤリングはエメラルドね。さすがにここまで殿下の色に染めれば、ウィリアム殿下との再婚約など言い出せないでしょう」

 お母様の言葉に、首を傾げる。
再婚約?でも国王陛下がお認めくださったのよね?

「国王陛下が、婚約の解消をお認めくださったのでしょう?」

「ええ。でも、ウィリアム殿下の選んだのがメイドの男爵令嬢ですもの。王妃殿下はお認めにならないし、各貴族の当主たちも認めないでしょう。その場合、やはりアイシュでないと、と言い出す可能性があると思うのよ。もちろん、旦那様はそんなこと許さないけれど」

「ミリア様が王位を継がれる可能性は・・・」

「婚約者は第二王子殿下だったわね。男尊女卑ではないけれど、ウィリアム殿下が無能だったならといったところね」

 我が国は、女性が爵位を継ぐことはできるけど、あまり良い顔はされない。

 だから、我が家のように娘しか後継がいない場合は、婿を取ってお婿さんに当主の座を継いでもらう。

 王家の場合、ウィリアム殿下がいらっしゃるものね。

 婚約者の問題を除けば、ウィリアム殿下は国王として遜色のない方ではあるから、ミリア様に継がせるのは難しいのかもしれない。

 婚約の解消は認められたけど、やっぱり私を正妃に、男爵令嬢を愛妾にという意見が出る可能性があるのね。

 だから・・・

 アスラン殿下のお色のドレスと宝飾品、というわけね。

 夜会当日は、アスラン殿下の婚約者として参加するのね。

 私、ウィリアム殿下以外とパーティーに出るの、初めてだわ。

 どうしましょう。少し緊張して来たわ。
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