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15.幼い頃の思い出の人です

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 アスラン・クライゼン第二王子殿下。

 幼い頃に三年間、我が家で生活を共にした私の

 私はウィリアム殿下の婚約者だったので、私の周囲にはリュカ以外に年齢の近い男性はいなかった。

 だから・・・
ちょっと、ほんのちょっとだけ、ワクワクした。

 別に恋心というわけではない。
そもそも、五歳から七歳までの間である。

 ただ、新たに兄のような弟のような、ウィリアム殿下とは違うお友達ができたことが楽しいと思っただけだ。

 月に二回しか会えないウィリアム殿下と違って、アスランはフローレンス公爵家で暮らしていたので、いつでも会える。

 それが楽しくて仕方なかった。

「アスラン・・・殿下が私と?」

「ウィリアム殿下が、婚約解消するかもしれないという情報を手に入れたのだろう。他の婚約が成る前に申し込んできたのだと思う」

「・・・もし、その婚約をお受けしたら、フローレンス公爵家の被害は最小限になりますか?」

「アイシュ。そんなことは気にしなくていいんだ。アイシュが嫌なら、婚約はお断りすれば良い。王家の有責にするのだから、我が家に被害などないよ」

 お父様はそうおっしゃるけど、そんなわけはない。

 たとえ、ウィリアム殿下の有責でも、婚約者の、しかも生まれながらの婚約者の心を繋ぎ止められなかった私のことを、非難する方もいるだろう。

 それに、ウィリアム殿下の選ばれた方がキチンと王太子妃教育をこなせればいいけど、上手くいかなかった場合、新たに正妃となる婚約者を選ぶ必要がある。

 王妃様のこともあるので、王家が横槍を入れられない婚約を、早めに成立させる必要がある。

「お受けしますわ」

「アイシュ。よく考えてからで良いんだ」

「いいえ。王妃殿下のことですから、私の婚約の話を聞いたら、すぐに横槍を入れてくる可能性があります。私はウィリアム殿下に恋心は抱いていませんが、都合の良い道具として王家に扱われるのは許容できません。元々、政略結婚する予定だったのです。よほど人格に問題のある方でしたら嫌ですけど、アスラン殿下ならかまいませんわ」

 出会った頃は、昏い瞳をしていたアスラン殿下。

 多分、親元から離れてたった一人になった寂しさからだろう。

 それでも三年のうちに、子供らしさを取り戻していた。

 あれ以来会っていないけど、政略結婚だと思えば問題はない。

 それよりも、王妃様が横槍を入れることで、ウィリアム殿下の恋が暗礁に乗り上げることの方が私にとっては問題だ。

 恋愛感情がないおかげで、ウィリアム殿下が誰かを好きになったからといって、心が揺さぶられることもない。

 もう共に歩くことはできないけど、不幸になれば良いなどとは考えていないのだ。
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