私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

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11.王女殿下に声をかけられました

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「アイシュ・フローレンス公爵令嬢様」

 王妃様とのお話からの帰り道、王族の居住区を出る手前で、声をかけられた。

「ミリア王女殿下」

「少しお時間良いですか?」

 ミリア・マデリーン王女殿下は、ウィリアム殿下の三歳年下の妹殿下で、ウィリアム殿下と同じ金髪に青い瞳をされている。

 とてもお可愛らしい方で、隣国のシェリエメール帝国の第二皇子殿下と婚約されている。

 シェリエメール帝国のことを学ぶために留学されているのだけど、帰国されていたのね。

「もちろんです。お戻りだったのですね、お帰りなさいませ」

「一時的なのです。ただいま戻りました

 ウィリアム殿下と生まれた時からの婚約者である私は、当然のことながらミリア様とも面識がある。

 ずっと「お姉様」「お姉様」と随分と懐いてくださっていた。

 留学することになって、私も随分と寂しく思ったものだ。

 私は再び王族の居住区に戻り、王女殿下のお部屋へとお邪魔した。

 ミリア様付きの侍女が紅茶を淹れてくれたので、向かい合ってソファーに腰を下ろす。

「改めて、おかえりなさいミリア様。いつお戻りで?」

「昨日戻ったばかりなのです。お会いしたかったです、アイシュお姉様。正妃殿下とお会いしてたのでしょう?王太子殿下のことですか?」

 ミリア様は、側妃様のお子様で、王妃様とは血は繋がっていない。

 王妃様がウィリアム様をお産みになられた時難産で、その後お子を授かるのが難しいと言われたことで、側妃様を娶られたのだ。

 側妃様と王妃様は、それなりに仲良しらしいけど、ミリア様は王妃様にもウィリアム殿下にも、適度な距離を取っている。

 嫌いとかではなく、今の距離感がいい関係を築けるから、らしい。

 側妃様がご存命だから、王妃様のことを「お母様」と呼ぶのはおかしいと言って、正妃様と呼んでいて、その関係でウィリアム殿下のことも王太子殿下と呼んでいる。

 ミリア様は明るくて屈託ない方だけど、やっぱり色々あるのかな、と思う。

 私がウィリアム殿下と結婚したら、仲を取り持ってあげられると思っていたけど、残念だけどもうその機会は訪れない。

「ええ、ちょっとね」

「お姉様、もしかしてご存知なのですか?」

 ちょっと待って。
その言い方だと、もしかして。

「もしかして、ミリア様知っているの?周囲に気付かれてるの?」

 昨日までここにいなかったミリア様に知られてるなんて!

 でも王妃様もご存知だったわ。
もしかしてもっと多くの人が知っていたりするの?







 

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