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番外編:最後まで足掻いて②〜エリック視点〜

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 平民のそれも貧民たちの食べるような食事だ。

 実際、僕は雑穀粥など口にしたことがなかった。

 それでも一日中働いた後のソレは、涙が出るほど美味しかった。

 僕は、王宮でどんな豪華な食事を食べても、美味しいと思ったことがない。

 いつもこんなものだと思って食べていた。

 なのにその、野菜が大半の炒め物のおかずも、米よりも雑穀が多い粥も、とてつもなく美味しく感じた。

 泣きながら食べる僕に、僕の教育係の奴隷の男が、自分の皿から一切れの肉を僕の皿に乗せてくれた。

「え・・・」

「ちゃんと働けば、肉だって食える。ここは、重い荷物を運んだとか、量をたくさん運んだとかで評価されるんじゃない。どれだけ自分にできることを一生懸命やっているかで評価されるんだ。お前は細っこくて力がないから軽い荷物運びだ。それをやっかんで文句を言ってくる奴もいるだろう。だが、腐るな、怒るな。ちゃんと周りは見ている。自分のできることにちゃんと向き合え。俺の言っていることが理解るな?」

「・・・うん。ありがとう」

 人にお礼を言ったのなんて、いつぶりだろう?
 僕はどれだけ傲慢だったんだろうか。

 教育係の彼だって、僕に仕事を教えながら、自分の仕事もしているのに。

 それなのに、楽しみなはずの肉を僕に分けてくれるのか。

 ここに来る前の、王族だった頃の僕なら。

 彼の言葉に、何を言っているのだと思っただろう。

 文句を言ってくる奴が間違っていると、怒りのままに怒鳴っていただろう。

 僕だって、楽な仕事の方がいいと、絶対に文句を言う。

 そう思ったら、足を出されて転ばされても腹立たしくなくなった。

 そういうことをした人間は、ちゃんと見られていて食事抜きの罰が下る。

 それに、僕が軽い荷物しか運んでないのは事実だ。

 今まで楽をしてきたから、軽い荷物でも一ヶ月は筋肉痛で辛かった。

 だけど、毎日毎日やっていれば少しずつ筋肉も付く。

 すぐには無理だけど、少しずつ重い荷物を運ぶことにした。

 そうしたら、食事に肉が少しだけど付くようになった。

 嬉しかった。
自分の努力が、誰かに評価されてる。

 それが何よりも嬉しかった。

 ここにいる誰もが、何か人に後ろ指指されることをしてきた。

 だけど誰もが、自分の罪と向き合い、前向きに歩んでいる。

 僕がもっと早くそれに気付いていたら、父上も母上も命を落とすことはなかったんだ。

 母上が悪いとは思わない。
僕は幼い子供じゃない。幼い頃ならともかく、何かがおかしいと自分で気付くべきだったんだ。

 僕はこれから、最後の時まで足掻いて生きていかなければならない。

 父上と母上の分も、ちゃんと自分の足で。
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