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番外編:何もかも失って②〜エリック視点〜
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母上から、ユリアが僕の悪口を言っていたと、だからユリアを叱責したのだと聞いた。
母上はずっと、僕のことを守ってくれていた。
そんな母上が僕に嘘を言うはずがない。
そう思ったから、王太子妃教育どころか王子妃教育も進んでいないユリアに見切りをつけようと思った。
そんな時、ローゼンタール王国でかつて我が国で公爵家だった、イングリス家の嫡男の結婚披露パーティーが開かれると、招待状が届いた。
婚約者共々、お越しください、と。
気は進まなかったが、母上からもアリスティアに近づくチャンスだと言われて、ユリアと共に向かうことにしたのだ。
パーティー会場で見たのは、隣に立つ男に微笑みを見せるアリスティアの姿だった。
僕には、あんな表情を向けたことがないくせに。
無性に腹立たしかった。
ローゼンタールの王太子がアリスティアを婚約者だと言い、アリスティアも僕のことを好きだと思ったことなどないと言い放つ。
全てが腹立たしくて、仕方なかった。
ユリアが見知らぬ令嬢と喚き散らしていても、どうでも良かった。
アリスティアは僕のものだと宣言して、連れ戻さなければ。それしか頭にはなかった。
あんなに、どうでも良かった婚約者だったのに。
彼女の笑顔も、その触れる手も、僕だけのものにしたかった。
今ならわかる。
僕はアリスティアに、もっと僕を見て欲しかったんだ。
王宮で見かけるアリスティアは、淑女の鑑そのもので、感情というものを感じさせなかった。
僕の姿を見て嬉しそうにすることも、辛いことがあって涙を見せることもなかった。
だから、感情豊かなユリアに惹かれた。
僕が必要とされている、そう思えたから。
幸せそうに微笑むアリスティアも、ユリアにハッキリとした口調でものを言うアリスティアも、僕の記憶の中にいるアリスティアとは重ならない。
セオドアでいた頃、もしこんなアリスティアを見ていたなら・・・
ユリアに心惹かれることなんかなかったのに。
アリスティアが、ローゼンタール王国の王太子の婚約者だということも、ローゼンタール王国の王姪で王位継承権があるということも、何を言われても納得したくなかった。
だから、役立たずだと罵ったんだ。
母上が僕にそう言っていたから。
直後、騎士の剣を手に取ったローゼンタールの王太子は、僕の手のひらを剣で貫いた。
痛みで叫ぶ僕に、奴は殺気を向ける。
なんて野蛮な奴だ。
どうして誰も僕を助けようとしない!
周囲から向けられるのは、侮蔑の眼差しばかり。
どうして・・・こんなことになったんだ。
母上はずっと、僕のことを守ってくれていた。
そんな母上が僕に嘘を言うはずがない。
そう思ったから、王太子妃教育どころか王子妃教育も進んでいないユリアに見切りをつけようと思った。
そんな時、ローゼンタール王国でかつて我が国で公爵家だった、イングリス家の嫡男の結婚披露パーティーが開かれると、招待状が届いた。
婚約者共々、お越しください、と。
気は進まなかったが、母上からもアリスティアに近づくチャンスだと言われて、ユリアと共に向かうことにしたのだ。
パーティー会場で見たのは、隣に立つ男に微笑みを見せるアリスティアの姿だった。
僕には、あんな表情を向けたことがないくせに。
無性に腹立たしかった。
ローゼンタールの王太子がアリスティアを婚約者だと言い、アリスティアも僕のことを好きだと思ったことなどないと言い放つ。
全てが腹立たしくて、仕方なかった。
ユリアが見知らぬ令嬢と喚き散らしていても、どうでも良かった。
アリスティアは僕のものだと宣言して、連れ戻さなければ。それしか頭にはなかった。
あんなに、どうでも良かった婚約者だったのに。
彼女の笑顔も、その触れる手も、僕だけのものにしたかった。
今ならわかる。
僕はアリスティアに、もっと僕を見て欲しかったんだ。
王宮で見かけるアリスティアは、淑女の鑑そのもので、感情というものを感じさせなかった。
僕の姿を見て嬉しそうにすることも、辛いことがあって涙を見せることもなかった。
だから、感情豊かなユリアに惹かれた。
僕が必要とされている、そう思えたから。
幸せそうに微笑むアリスティアも、ユリアにハッキリとした口調でものを言うアリスティアも、僕の記憶の中にいるアリスティアとは重ならない。
セオドアでいた頃、もしこんなアリスティアを見ていたなら・・・
ユリアに心惹かれることなんかなかったのに。
アリスティアが、ローゼンタール王国の王太子の婚約者だということも、ローゼンタール王国の王姪で王位継承権があるということも、何を言われても納得したくなかった。
だから、役立たずだと罵ったんだ。
母上が僕にそう言っていたから。
直後、騎士の剣を手に取ったローゼンタールの王太子は、僕の手のひらを剣で貫いた。
痛みで叫ぶ僕に、奴は殺気を向ける。
なんて野蛮な奴だ。
どうして誰も僕を助けようとしない!
周囲から向けられるのは、侮蔑の眼差しばかり。
どうして・・・こんなことになったんだ。
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