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幸せな時間

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 セオドア王国とコストナー男爵家への対応は、とりあえずお母様たちにお任せしておきましょう。

 わたくしも他人事とするつもりはありませんが、何やら皆様楽しそうなので、あとでどうするのをお聞きすることにしますわ。

 だってお兄様たちが、ジークハルト様と交流しなさいとおっしゃるんだもの。

 わたくしもジークハルト様とご一緒したいですから、その提案を受け入れましたわ。

「ジークハルト様、ありがとうございます。この髪飾り、とても素敵ですわ」

「気に入って貰えて良かった。アルディスの街で一目見て、アリスティア嬢に似合うと思ったんだ」

 ジークハルト様とご一緒した、織物の街アルディス。

 目的はキャスリーンお義姉様の婚礼衣装の布地でしたが、そこでジークハルト様は綺麗な刺繍の入った布の髪飾りを買ってくださっていたのです。

 ジークハルト様は銀の髪。そして瞳はわたくしもジークハルト様も銀の瞳です。

 婚約者の色を纏うというわけにはいかないのですが、ジークハルト様は光沢のある白い布に銀と淡いオレンジや緑、水色やピンクの刺繍が入った髪飾りを選んで下さいました。

 リボン結びになったそれは、とても可愛らしくて素敵でした。

 どの色のドレスを着ても、その色が髪飾りに入っていますもの。
 もうずっとこの髪飾りを付けていようかしら。

「あ、あの、ジークハルト様」

「うん?」

「こ、婚約者になったのですし、わたくしのことはアリスティアとお呼びください」

 家族は時々アリスと呼びますし、アリスでもかまいませんわ、と続けました。

 だって他人行儀に見えますもの。
セオドアの元婚約者様とか、コストナー男爵令嬢様とかにそう思われたら嫌ですわ。

 わたくしが心から望んで、婚約していただいたのです。

 政略結婚などと誤解されたくありませんし、その、もっと親しくなりたいのです。

「なら、僕のことはジークと呼んでくれる?アリス」

「は、はい。ジーク様」

「本当は様もいらないけど、アリスに無理強いはしたくないから、慣れたらジークと呼び捨てにして」

 にっこりと微笑んでジークハルト様・・・ジーク様は、そうおっしゃいますけど、呼び捨てですか?わたくし、誰かを呼び捨てで呼んだことなどありません。

 だ、大好きな婚約者のお願いですから頑張りますけど、時間がかかると思いますわ。

 その日は、とても穏やかに、美味しいお茶をいただきながら、ジーク様と過ごしました。

 明日は、シャルロット様とお茶をご一緒いたします。

 ジーク様は、ブラシール様とお父様たちのお話合いに参加されるそうです。

 終わりましたら、お庭をお散歩するお約束をいたしました。

 楽しみですわ。
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