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許されるなら〜ジークハルト視点〜

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「ジークハルト様の隣でお支えする役目を与えて下さい」

 アリスティア嬢の言葉に、体も思考も固まった。

 今、彼女は何と言った?

 これは僕の妄想か?
自分に都合のいい夢を見ているのか?

 自分の顔に熱が溜まっていくのが分かる。

 駄目だと、心が訴えている。
ここで勘違いをして、せっかく一緒に過ごせるようになったのに、台無しにしてはいけない。

「それは、公爵令嬢として王家を支えてくれるということ?」

 そう尋ねながら、そうでなければいいと欲が出てしまう。

 そうではないと言ってくれた彼女の頬や耳が赤くなっていることに、期待してしまう。

 いいのだろうか?

 もう一度願っても。

 少しでも嫌そうなら・・・素直に謝ろう。
 もう二度と願わないと誓おう。

 僕は君が笑っていてくれるなら、その隣にいるのが僕でなくても、我慢できる。

 もう、君を手に入れたくて愚かな選択をした僕ではいられないんだ。

 君を悲しませるのなら、僕自身の幸せなんて欲しいと思わなくなった。

 僕は彼女の細く白い手を取ると、跪いた。

「アリスティア・イングリス嬢。僕は貴女のことを心からお慕いしています。もしも、叶うなら・・・僕のこの手を取って、僕の隣でずっと笑っていてもらえませんか?泣かせることがあるかもしれない。だけど、この命尽きる日まで、貴女が幸せだと思えるように努力し続けると誓います」

 あの王命での婚約のように、間違ってしまう日があるかもしれない。

 だけど、彼女が笑顔で望むことが出来るように、手助けし続けよう。

 間違えないように、ちゃんと言葉にして彼女の気持ちを知ろう。

 アリスティア嬢の、綺麗な銀の瞳を見上げる。

 僕を見つめるその瞳から、ポロポロと透明な雫がこぼれ落ちた。

 僕は・・・

 僕はまた間違えたのか?

 彼女はただ、友人として、従妹として、支えてくれようと思ったのかもしれない。

「アリスティア嬢・・・すまない。無理強いするつもりはないんだ。ただ、僕は君のことが好きだから、そばにいて欲しいとつい願ってしまったんだ。泣かないで欲しい。婚約しろなどと言わないから。もう二度とこんなことを言ったりしないから」

 僕のその言葉に、アリスティア嬢は涙をこぼしながらも、その目を大きく見開いた。

 そして、ブンブンと顔を横に振る。

「ちが・・・違・・・」

「僕を気遣わなくて良い。僕は、アリスティア嬢が笑っていてくれるなら、それでいいんだ」

「違う・・・のです。わたくしは、わたくしは・・・」

 その涙を拭おうと、立ち上がってハンカチをそっと頬にあてる。

 アリスティア嬢は僕を見上げると、そのままぎゅっと僕に抱きついてきた。

「わたくしもジークハルト様をお慕いしております。わたくしを、わたくしをどうか婚約者にしてください」
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