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再びの告白とわたくしの気持ち
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「アリスティア・イングリス嬢。私、ジークハルト・ローゼンタールは貴女のことを心からお慕いしております。どうか私めに貴女と揃いのお飾りを付け、エスコートさせていただく栄誉をお与えください」
ジークハルト様はそうおっしゃって、右手を差し出されました。
わたくしはかつて、セオドア王国の王太子殿下エリック殿下の婚約者でした。
その婚約者様にですら、こんなふうにエスコートを願っていただいたことはありません。
いえ、エスコートしていただいた記憶もありませんわ。
わたくしたちの婚約は、学園に入学する前に白紙撤回されましたので、公務をご一緒することもありませんでした。
ジークハルト様は、大国ローゼンタールの王太子殿下。
本来なら、ジークハルト様にエスコートしていただきたいと願うご令嬢は、後を絶たないと思います。
そんな方が、従妹とはいえ臣下のわたくしの前に跪き、エスコートを懇願してくださる。
それを嬉しいと思わない令嬢がいるでしょうか。
わたくしはジークハルト様の右手に、そっと手を重ねました。
「どうぞよろしくお願いいたします」
「ありがとう、アリスティア嬢」
「いいえ。わたくしの我儘を聞いてくださり、ありがとうございます」
わたくしがジークハルト様とお揃いのお飾りを付けたいのです。
わたくしがジークハルト様にエスコートしていただきたいのです。
「ジークハルト様。あの、シャルロット様へのプレゼントも一緒に買いに行ってくださいませんか?」
図々しいかと悩みましたが、エスコートを承諾していただいたら、これもお願いしてみなさいとお兄様にアドバイスされていました。
わたくしには、いくつか夢がありました。
家族と街歩きをすること。
お友達のお家にお出かけすること。
お友達のお誕生日のプレゼントを、自分で選んで買うこと。
それから。
好きな方とお出かけすること。
エリック殿下とたった一度ですが、市井に出かけました。
ですが今思うと、あれは自由のなかったわたくしの、唯一の反抗だったのかもしれません。
エリック殿下のことを嫌っていたわけではありません。
生まれた時からの婚約者です。
王子妃教育のせいで、ほとんど交流らしい交流はできませんでしたが、婚約者として仲良くしていきたいと思っていました。
もっとも、エリック殿下は夢と同じように、ユリア様のことをお好きになりましたけど。
本当にわたくし、エリック殿下のことを嫌ってはおりません。
あの夢はあまり気持ちのいいものではありませんでしたけど、夢のせいで嫌ったりはいたしません。
ただ・・・
あの婚約がなければ、わたくしは素直にジークハルト様の求婚をお受けしたのではないか、そう思うのです。
ジークハルト様はそうおっしゃって、右手を差し出されました。
わたくしはかつて、セオドア王国の王太子殿下エリック殿下の婚約者でした。
その婚約者様にですら、こんなふうにエスコートを願っていただいたことはありません。
いえ、エスコートしていただいた記憶もありませんわ。
わたくしたちの婚約は、学園に入学する前に白紙撤回されましたので、公務をご一緒することもありませんでした。
ジークハルト様は、大国ローゼンタールの王太子殿下。
本来なら、ジークハルト様にエスコートしていただきたいと願うご令嬢は、後を絶たないと思います。
そんな方が、従妹とはいえ臣下のわたくしの前に跪き、エスコートを懇願してくださる。
それを嬉しいと思わない令嬢がいるでしょうか。
わたくしはジークハルト様の右手に、そっと手を重ねました。
「どうぞよろしくお願いいたします」
「ありがとう、アリスティア嬢」
「いいえ。わたくしの我儘を聞いてくださり、ありがとうございます」
わたくしがジークハルト様とお揃いのお飾りを付けたいのです。
わたくしがジークハルト様にエスコートしていただきたいのです。
「ジークハルト様。あの、シャルロット様へのプレゼントも一緒に買いに行ってくださいませんか?」
図々しいかと悩みましたが、エスコートを承諾していただいたら、これもお願いしてみなさいとお兄様にアドバイスされていました。
わたくしには、いくつか夢がありました。
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それから。
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ですが今思うと、あれは自由のなかったわたくしの、唯一の反抗だったのかもしれません。
エリック殿下のことを嫌っていたわけではありません。
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もっとも、エリック殿下は夢と同じように、ユリア様のことをお好きになりましたけど。
本当にわたくし、エリック殿下のことを嫌ってはおりません。
あの夢はあまり気持ちのいいものではありませんでしたけど、夢のせいで嫌ったりはいたしません。
ただ・・・
あの婚約がなければ、わたくしは素直にジークハルト様の求婚をお受けしたのではないか、そう思うのです。
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