2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな

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それでも

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 お兄様のお話は、わたくしには難しく理解しきれませんでした。

 そんなわたくしに、お兄様は慌てなくて良いから、ゆっくり考えてごらんとおっしゃいました。

 エリック殿下とジークハルト様との違い。

 エリック殿下は、わたくしと婚約しているままで、ユリア様と恋仲になりました。

 恋をしてしまうのが駄目なわけではありません。
 わたくしはしたことがありませんが、きっとどうしようもないことなのでしょう。

 ただ、わたくしにそう打ち明けて、婚約を解消してからにして欲しかったと思います。

 わたくしが王妃様から厳しい教育を受けていても、エリック殿下が気遣ってくださることはありませんでした。

 あの市井へのお出かけ、あれだけがわたくしの望むことをしてくださった唯一でした。

 わたくしはあの日、髪を切ることになりましたけど、とでも嬉しかったのです。

 生まれた時からの婚約者で、長い時間を共に過ごしたはずなのに、今思い返せば婚約者らしい触れ合いなどなく、ただ婚約者という形式上の関係でしかありませんでした。

 だから。
わたくしも一緒に行きたいという願いを叶えてくださったことがとても嬉しかった。

 でもエリック殿下は、わたくしが髪を切ることになったことを王妃様に叱られていても、庇っては下さいませんでした。

 わたくしの不注意だとはいえ、何も言わず、自分が叱られるのを恐れるように逃げてしまわれたエリック殿下に、わたくしはとでも落胆いたしました。

 やっぱりわたくしは王命という、親に決められた婚約者でしかないのだと、痛感したのです。

 確かにジークハルト様も、わたくしのことを王命で婚約者にしようとなさいました。

 ですが王命の撤回がされてからは、わたくしの負担にならないよう、いつも従兄としての距離を保って下さいました。

 エスコートしてくださることはあっても、わたくしに不用意に触れようとはなさらない。

 最初は、王命の撤回という形になったことで、わたくしのことを嫌になったのだと思ったのですが、わたくしを見つめるジークハルト様の目はいつも優しくて。

 あんな風に、他の方を見つめる?

 あんな風に、他の方を好きになられる?

 それを嫌だと思うわたくしは、傲慢ではないでしょうか。

 婚約者でもない、従妹でしかないのに。

 わたくしが王命での婚約を拒んだ形なのに、こんなことを思うことは、図々しいことではないのでしょうか。

 それでも。

 ジークハルト様に、他の方の手を取って欲しくないのです。

 わたくしは、まだ恋というものをよく分かっていません。

 ジークハルト様が思ってくださったのと同じ気持ちを返せないかもしれません。

 それでも。



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