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妹の気持ち〜ライアン視点〜

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「アリスティアは最近、ジークハルトと仲が良いね」

 僕がそう言うと、アリスティアの頬がほんの少し赤みを増した。

 ん?
アリスティアは幼い頃から王子妃教育を受けていたため、あまり感情を表に出すことがない。

 最近でこそ楽しそうに過ごしているが、セオドア王国ではあの屑が阿婆擦れと一緒にいても感情を見せることはなかった。

「あの・・・ジークハルト様が今度、王宮でお茶会を開いて、他のご令嬢たちと会ってみたらどうかとおっしゃって下さったのです。ご令嬢たちとお買い物をしたりお茶を楽しんだりするのも楽しいと思うって」

「へぇ。確かに良いかもね。アリスティアはセオドアでも友達と遊ぶようなことはなかったし」

 そもそも、時間の大半を教育で埋め尽くされていた。

 婚約者と王家に縛られ、友人らしい友人すら作れなかった。

「お友達・・・出来るでしょうか。わたくし、キャスリーン様やお母様、アンナくらいしかお話したことがなくて」

 確かにアリスティアは、他のご令嬢たちと親しくする時間すら与えてもらえなかった。

 その上、後で聞いたところによると、王子妃教育の中で、

『イングリス様は王太子妃になるのです。他のご令嬢に媚び諂うことなどあってはなりません。お声がけをすることもお控え下さい。親しくするべきご令嬢は、王家からご指示があります。その方々とだけお話なさいますよう』

 などと、ふざけたことを言われていたらしい。

 真っ白なアリスティアを、王家のあの汚らしい色で染めて、反論すら疑問に思わないように、徹底的に傀儡としようとした。

 実際、あの夢・・・いや、巻き戻りの記憶がなければ、アリスティアは同じ運命を辿っていただろう。

 処刑のショックが、初めてアリスティアに王家に対する拒否反応を持たせた。

 キャスリーン嬢や母上は、アリスティアにとって家族でしかない。

 確かに他のご令嬢に友人ができれば、アリスティアも嬉しいだろう。

「アリスティアは僕の自慢の妹だよ。だから大丈夫。いろんな年代のご令嬢を呼んでもらいなさい。キャスリーン嬢にも一緒に参加してもらうといい。そうすれば、少しは安心だろう?」

 王妃である伯母上や、国王陛下の妹である母上が参加すれば、どうしてもご令嬢だけのお茶会というわけにはいかなくなる。

 全ての人間が、アリスティアに好意的とは限らない。

 あの男爵令嬢のように、恋敵としてアリスティアを排しようとする愚か者もいるだろう。

 危ない目にあわせるつもりはないが、小さな悪意からすら守っていては、アリスティアは本当の自由を手にすることはできないと思う。

 だからこそ、キャスリーン嬢に任せよう。彼女なら心配ない。
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