2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな

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あの子なりの誠意〜イングリス公爵夫人テレサ視点〜

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「帝国と隣国には、自分たちがどれだけ愚かなのか、よーく分からせる必要があるわね」

 アリスティアに届いた、私の可愛いお姫様曰く「気持ち悪い」手紙の差出人を徹底的に潰すつもりよ。

 普通の求婚の手紙なら、ギリギリ許せるわ。
 身分的にも王族や公爵家侯爵家の子息だから、釣り合わないわけではない。

 でも内容が問題よ。
何が「妃に迎える」よ!何が「貴女と私の子供なら神に愛される」よ!何が「俺の可愛い駒鳥」よ!

 確かにアリスティアは可愛くて美しくて神に愛された娘だけど、気持ち悪いのよ!

 私のお姫様が気持ち悪いと思った時点で、一考する価値もないわよ!

 アリスティアに自由に好きな相手を見つけさせたくて、ジークハルトとの婚約は見送ったけど、こんな馬鹿な手紙を送ってくる人間はやっぱりいたわね。

 ここで「自分と婚約していたら守れたのに」と言わないあたりが、ジークハルトの素直なところね。

 そういえば、最近あの子を見ていないわね。

 倒れた時にアリスティアがお見舞いの手紙を送ったら、すぐに返礼と小さな花束が届いたらしいけど。

「最近、ジークハルトはどうしてるの?」

 マリベルお義姉様に尋ねる。
一応お兄様の奥方だならお義姉様呼びだけど、マリベルは私の学園時代からの友人なのよ。

「それですが、母上。先日ジークハルトから王太子の座を代わって欲しいとの話がありました」

「は?」

「私も陛下も聞いているわ。『今の自分はアリスティアしか愛せない。でも王太子がいつまでも婚約者もいない状態なのは、国として良くない。いつか他の誰かを好きになるかもしれないがそれを待つわけにはいかない』ですって。言ってることは正しいんだけどね」

 確かに、ジークハルトの言っていることは間違ってはいないわ。

 ジークハルトはすでに十九歳。
その年齢で婚約者も決まっていないのは珍しいもの。

 でも、王太子の座を代わったりしたら、アリスティアが自分のせいだと気に病まないかしら。

「ジークハルトは僕が王太子の座に就いてくれるなら、他国に勉強に出ると言っていました。この国にいたらアリスティアが気に病むだろうからって。いなくても気にするでしょうけど、顔を見るよりはマシだろうって。そしてアリスティアが婚姻したら、この国を支えるために戻って来るそうです」

 ライアンの言葉にため息が出る。

 本当に極端な子。
でも、その真っ直ぐなところ、嫌いじゃないわ。

「あれでも、あの子なりの誠意なのよ。王命で婚約をしたことに対する詫びね」

 王太子に婚約者がいない問題は、そのうちアリスティアも気付くでしょうね。

 その時に、自分が受けなかったからとアリスティアが気にするのを考えたのでしょうね。

 告白しておいて、政略での婚約者も作れないのでしょうし。

 あの子は本当に不器用ね。
 
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