上 下
36 / 122

あら?わたくしハズレを引いたのですね

しおりを挟む
「その話は後で。それよりもこの腹立たしいゴミはどうしますか?」

 ジークハルト殿下のお話よりも、先にこの手紙を片付けようと、お兄様はお母様を促します。

 どうされたのかしら?
そういえば最近、ジークハルト殿下とお会いしていませんわ。

 公務がお忙しいのかしら?
お見舞いのお手紙のお返事はすぐに下さいましたけど、お忙しいのに気を遣って下さったのね。

 何か、差し入れでも差し上げたらどうかしら?
 お忙しいなら、何か簡単につまめる甘いものとか。

 ジークハルト殿下は、甘いものお嫌いかしら?

 わたくし、今度お菓子作りに挑戦しようと思っていますの。

 上達したら、お届けしようかしら。

 わたくしが色々と頭の中で考えているうちに、お母様たちのお話は白熱しておりました。

「はぁぁ。問題なのは、隣国の第二王子に公爵家次男。帝国の皇太子に、公爵家嫡男。別の公爵家の嫡男ね」

「とりあえずはその五人ですね。後のはまぁ、許容範囲の求婚の手紙でしたよ」

 あら?許容範囲のお手紙もありましたのね。
 わたくしが開いたのは、ハズレだったということかしら。

「では、隣国と帝国にはキツく抗議をしなくてはね。マリベルお義姉様に会う時間をいただきたいと知らせて」

 マリベル様とは、わたくしの伯母様。つまりはこの国の王妃ですわ。

 緩やかに弧を描く金髪に、透き通った青空色の瞳をされた、とてもお綺麗な方ですのよ。

 うちのお母様は、少しキツめの、正統派の美人というタイプなのですが、マリベル伯母様はどちらかというと可愛らしいタイプの方です。

 でも、お美しいのは同じですわ。
伯父様も整ったお顔をされていますから、ジークハルト殿下はきっとお二人の良いところを受け継いだのだと思いますわ。

 少しして、伯母様がお時間が取れるとのことで、お父様やお母様、お兄様は伯母様の元へと行かれることになりました。

 わたくしもご一緒しようと思っておりましたが、お母様に不快な手紙を読んで気分が悪いだろうから、何か気晴らしをしなさいと言われましたの。

 確かに気持ち悪かったですが、大丈夫ですのに。

 でも、もしかしたらわたくしには難しい、高度なお話をされるのかもしれませんわ。

 わたくし、セオドア王国の王子妃教育は終えましたけど、ローゼンタールでは何も致しておりません。

 どこに嫁ぐにしても、そろそろ勉強をした方が良いかもしれませんね。

「お菓子作りをしたいと言っていたでしょう?無事に婚約者が着いたからと、アンナが戻って来ているわよ」

「アンナが?もう!今日くらいお休みすれば良いのに」

「ふふっ。アンナはアリスティアのそばをよほど離れたくないのね。私たちが話している間だけでも一緒にいなさい。婚約者とご家族は晩餐に招待しましょう。良いわね?」

 執事、アンナの父親は深々と頭を下げて、連絡のために退出しました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ
恋愛
 侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。  病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。  また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。 「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」  無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。  そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。  生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。  マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。 「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」  三度目の人生はどうなる⁈  まずはアンネマリー編から。 誤字脱字、お許しください。 素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...