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強欲は大罪だ〜ローゼンタール前国王視点〜
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「そうか。謝罪は受け入れたか」
現ローゼンタール王国国王である、息子の報告に大きく息を吐いた。
アリスティアが精霊の力により、巻き戻しを行ったと知ったのは、この国来たあの子を見た時だ。
セオドア王国で、生まれた時から王太子の婚約者だったあの子が、王太子の不貞により婚約を白紙撤回したという報告は受けていた。
そして国外に出る自由もなかったあの子共々、娘家族がローゼンタール王国に来るというので、喜んで許可した。
十歳の頃から王子妃教育のために王宮に通う時間が増え、会うこともままならなくなった孫娘。
それでも、婚約者や婚約者家族との交流を大切にすべきだと思った。
こちらも息子に王位を譲るために、忙しかったのもある。
そんな中で、傷ついた孫娘と婚約したいと孫息子が言い出した。
幼い頃にアリスティアに一目惚れしたというジークハルトの願いに、頷いてしまった。
アリスティアのことは可愛い。
そしてそれと同じようにジークハルトのことも可愛かった。
ジークハルトは、我が孫息子ながら見目も麗しく成績も優秀な子だ。
一目惚れしたというアリスティアのことを十三年も片想いしていたのなら、きっとあの子を悲しませることはないだろう。
孫たちの幸せを願うと同時に、ジークハルトと結婚すればずっと手元に置ける。
そういう打算があったことは認めざる得ない。
しかし、久しぶりに会ったあの子が、精霊の力により時間を巻き戻したことを知った。
学園内でアリスティアに護衛をつけていなかった娘を叱りながら、王命で婚約を決めたことを後悔した。
あの子が愛情を対価に巻き戻しをしたならば、今のあの子には失恋の悲しみも誰かを大切に想ったことも記憶にない。
アリスティアは夢だと思っているから、それが巻き戻しだと伝えなかったらしい。
それは正しい判断だ。
それほどまでに愛していた男に裏切られたと知ったら、それが事実だと知ったら、アリスティアは人を愛することが出来なくなってしまう。
だが、王命で婚約をさせるべきではなかった。
あの子の身分や本人の資質を考えても、婚約者がいないままでは全ての婚約をはね除けることは難しい。
断り続ければ、あの子に疵があるのではという噂も出て来るだろう。
それを全て消し去ることは難しい。
それに、もちろん護衛は付けるから危害を加えられるようなことはないが、婚約者候補と会い、候補としての交流だと言われれば、護衛とて隣でべったり付いていることはできない。
いくら前もって見極めていても、不埒な行為をしようとする人間がいないとは言い切れない。
だからジークハルトとの婚約は、あの子を守るためには最善だった。
だが、あの子がそれを望んだだろうか?
現ローゼンタール王国国王である、息子の報告に大きく息を吐いた。
アリスティアが精霊の力により、巻き戻しを行ったと知ったのは、この国来たあの子を見た時だ。
セオドア王国で、生まれた時から王太子の婚約者だったあの子が、王太子の不貞により婚約を白紙撤回したという報告は受けていた。
そして国外に出る自由もなかったあの子共々、娘家族がローゼンタール王国に来るというので、喜んで許可した。
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それでも、婚約者や婚約者家族との交流を大切にすべきだと思った。
こちらも息子に王位を譲るために、忙しかったのもある。
そんな中で、傷ついた孫娘と婚約したいと孫息子が言い出した。
幼い頃にアリスティアに一目惚れしたというジークハルトの願いに、頷いてしまった。
アリスティアのことは可愛い。
そしてそれと同じようにジークハルトのことも可愛かった。
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一目惚れしたというアリスティアのことを十三年も片想いしていたのなら、きっとあの子を悲しませることはないだろう。
孫たちの幸せを願うと同時に、ジークハルトと結婚すればずっと手元に置ける。
そういう打算があったことは認めざる得ない。
しかし、久しぶりに会ったあの子が、精霊の力により時間を巻き戻したことを知った。
学園内でアリスティアに護衛をつけていなかった娘を叱りながら、王命で婚約を決めたことを後悔した。
あの子が愛情を対価に巻き戻しをしたならば、今のあの子には失恋の悲しみも誰かを大切に想ったことも記憶にない。
アリスティアは夢だと思っているから、それが巻き戻しだと伝えなかったらしい。
それは正しい判断だ。
それほどまでに愛していた男に裏切られたと知ったら、それが事実だと知ったら、アリスティアは人を愛することが出来なくなってしまう。
だが、王命で婚約をさせるべきではなかった。
あの子の身分や本人の資質を考えても、婚約者がいないままでは全ての婚約をはね除けることは難しい。
断り続ければ、あの子に疵があるのではという噂も出て来るだろう。
それを全て消し去ることは難しい。
それに、もちろん護衛は付けるから危害を加えられるようなことはないが、婚約者候補と会い、候補としての交流だと言われれば、護衛とて隣でべったり付いていることはできない。
いくら前もって見極めていても、不埒な行為をしようとする人間がいないとは言い切れない。
だからジークハルトとの婚約は、あの子を守るためには最善だった。
だが、あの子がそれを望んだだろうか?
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