2 / 122
目覚めたら三年前に戻っていました
しおりを挟む
「お嬢様。アリスティアお嬢様。良いお天気ですよ」
かけられた声にゆっくりと瞼を持ち上げます。
わたくし、どうしたのかしら。
確か、卒業パーティーに参加していて・・・
そうだわ!エリック殿下に婚約破棄を宣言されて、それから誰かに床に押さえつけられたわ。
その後の記憶がない。
「お嬢様?学園に通うのだから早起きする練習をなさるのではなかったのですか?」
その声にハッとして顔を上げます。
目に映った、茶色の髪を後ろでひとまとめにした彼女は・・・
「アンナ?」
「はい、アリスティアお嬢様。おはようございます」
私の侍女のアンナです。
え?でも、ずっと私を支えてくれた彼女は、私が学園の最終学年に上がった年にお嫁に行ったはずです。
私がエリック殿下に輿入れするまではお仕えしたいと言ってくれていたのですが、お相手のお祖母様の体調が芳しくなく、ひと目花嫁姿を見せてあげたいお願いされたのです。
そ、それに今アンナは、学園に通うのだから早起きの練習をすると言いませんでしたか?
確かに私は、学園に入学する数日前から早起きをするように心がけて来ました。
エリック殿下が学園に通う時に、お迎えに来てくださるとおっしゃっていたので、お待たせしてはいけないからです。
まぁそのお迎えも、エリック殿下がユリア様と親しくなさるようになってからは、途絶えてしまいましたが。
いえ。
今の問題は、そんなことではありません。
お嫁に行ったはずのアンナが侍女姿でここにいて、私が早起きの練習をすると言っていたということは・・・
ベッドから起き上がると、急いでドレッサーの鏡に向かいました。
学園入学の少し前、わたくしは腰まで伸びていた髪を肩より少し長い程度まで切ったのです。
実は、エリック殿下と市井にお忍びでお出かけしていた時に、子供に髪に塗料を付けられてしまったのです。
わたくしの髪は真っ白ですから、子供達からしたらおばあさんのように思えたのでしょう。
子供たちには、わたくしの身分など分かりません。
塗料を浴びたわたくしの惨状を見て、護衛の方々もエリック殿下も顔を真っ青にされていましたが、わたくしとしてはエリック殿下にかからなくて良かったと思いました。
セオドア王国では、髪を短くしているご令嬢もいらっしゃいます。
わたくしは三年後には婚姻が控えていますので、その時に結い上げる長さは必要ですが、公爵令嬢として髪型をほとんど変えることがありませんでしたから、少し新鮮に思えたのです。
髪がこの長さということは・・・
わたくし、もしかして三年前に戻ってしまったのですか?
かけられた声にゆっくりと瞼を持ち上げます。
わたくし、どうしたのかしら。
確か、卒業パーティーに参加していて・・・
そうだわ!エリック殿下に婚約破棄を宣言されて、それから誰かに床に押さえつけられたわ。
その後の記憶がない。
「お嬢様?学園に通うのだから早起きする練習をなさるのではなかったのですか?」
その声にハッとして顔を上げます。
目に映った、茶色の髪を後ろでひとまとめにした彼女は・・・
「アンナ?」
「はい、アリスティアお嬢様。おはようございます」
私の侍女のアンナです。
え?でも、ずっと私を支えてくれた彼女は、私が学園の最終学年に上がった年にお嫁に行ったはずです。
私がエリック殿下に輿入れするまではお仕えしたいと言ってくれていたのですが、お相手のお祖母様の体調が芳しくなく、ひと目花嫁姿を見せてあげたいお願いされたのです。
そ、それに今アンナは、学園に通うのだから早起きの練習をすると言いませんでしたか?
確かに私は、学園に入学する数日前から早起きをするように心がけて来ました。
エリック殿下が学園に通う時に、お迎えに来てくださるとおっしゃっていたので、お待たせしてはいけないからです。
まぁそのお迎えも、エリック殿下がユリア様と親しくなさるようになってからは、途絶えてしまいましたが。
いえ。
今の問題は、そんなことではありません。
お嫁に行ったはずのアンナが侍女姿でここにいて、私が早起きの練習をすると言っていたということは・・・
ベッドから起き上がると、急いでドレッサーの鏡に向かいました。
学園入学の少し前、わたくしは腰まで伸びていた髪を肩より少し長い程度まで切ったのです。
実は、エリック殿下と市井にお忍びでお出かけしていた時に、子供に髪に塗料を付けられてしまったのです。
わたくしの髪は真っ白ですから、子供達からしたらおばあさんのように思えたのでしょう。
子供たちには、わたくしの身分など分かりません。
塗料を浴びたわたくしの惨状を見て、護衛の方々もエリック殿下も顔を真っ青にされていましたが、わたくしとしてはエリック殿下にかからなくて良かったと思いました。
セオドア王国では、髪を短くしているご令嬢もいらっしゃいます。
わたくしは三年後には婚姻が控えていますので、その時に結い上げる長さは必要ですが、公爵令嬢として髪型をほとんど変えることがありませんでしたから、少し新鮮に思えたのです。
髪がこの長さということは・・・
わたくし、もしかして三年前に戻ってしまったのですか?
143
お気に入りに追加
3,953
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる