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目覚めたら三年前に戻っていました

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「お嬢様。アリスティアお嬢様。良いお天気ですよ」

 かけられた声にゆっくりと瞼を持ち上げます。

 わたくし、どうしたのかしら。
確か、卒業パーティーに参加していて・・・

 そうだわ!エリック殿下に婚約破棄を宣言されて、それから誰かに床に押さえつけられたわ。

 その後の記憶がない。

「お嬢様?学園に通うのだから早起きする練習をなさるのではなかったのですか?」

 その声にハッとして顔を上げます。

 目に映った、茶色の髪を後ろでひとまとめにした彼女は・・・

「アンナ?」

「はい、アリスティアお嬢様。おはようございます」

 私の侍女のアンナです。
え?でも、ずっと私を支えてくれた彼女は、私が学園の最終学年に上がった年にお嫁に行ったはずです。

 私がエリック殿下に輿入れするまではお仕えしたいと言ってくれていたのですが、お相手のお祖母様の体調が芳しくなく、ひと目花嫁姿を見せてあげたいお願いされたのです。

 そ、それに今アンナは、学園に通うのだから早起きの練習をすると言いませんでしたか?

 確かに私は、学園に入学する数日前から早起きをするように心がけて来ました。

 エリック殿下が学園に通う時に、お迎えに来てくださるとおっしゃっていたので、お待たせしてはいけないからです。

 まぁそのお迎えも、エリック殿下がユリア様と親しくなさるようになってからは、途絶えてしまいましたが。

 いえ。
今の問題は、そんなことではありません。

 お嫁に行ったはずのアンナが侍女姿でここにいて、私が早起きの練習をすると言っていたということは・・・

 ベッドから起き上がると、急いでドレッサーの鏡に向かいました。

 学園入学の少し前、わたくしは腰まで伸びていた髪を肩より少し長い程度まで切ったのです。

 実は、エリック殿下と市井にお忍びでお出かけしていた時に、子供に髪に塗料を付けられてしまったのです。

 わたくしの髪は真っ白ですから、子供達からしたらおばあさんのように思えたのでしょう。

 子供たちには、わたくしの身分など分かりません。

 塗料を浴びたわたくしの惨状を見て、護衛の方々もエリック殿下も顔を真っ青にされていましたが、わたくしとしてはエリック殿下にかからなくて良かったと思いました。

 セオドア王国では、髪を短くしているご令嬢もいらっしゃいます。

 わたくしは三年後には婚姻が控えていますので、その時に結い上げる長さは必要ですが、公爵令嬢として髪型をほとんど変えることがありませんでしたから、少し新鮮に思えたのです。

 髪がこの長さということは・・・

 わたくし、もしかして三年前に戻ってしまったのですか?
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