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最終話:私がそばにいたい人⑤〜アナ視点〜
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私の名前はアナ・オフリー。
男爵家の娘です。
といっても、私は元々は平民の子供でした。
それが聖魔法所持者とわかり、下位とはいえ貴族となり、貴族が通う学園に通うようになったのです。
その学園で出会ったのが、ルーナ・フィオレンサ様。
金色を帯びた瞳と銀髪、その美しい容姿から、月の妖精姫と呼ばれるお方でした。
王族のライアン王子殿下やリリアナ王女殿下に次いで、高貴な身分のルーナ様。
ですが、出会った時から優しく接して下さり、いつも気遣ってくださいました。
ルーナ様は、誰よりも王太子妃、王妃に相応しい方でした。
その魔力量も使える魔法も、淑女としてのマナーも知識量も、全てにおいて他を圧倒していたルーナ様。
ですが、ルーナ様が望まれたのは、王子殿下ではなく、いつもご一緒にいた従兄の侍従をされているカイル様でした。
王子殿下もルーナ様に、特別な感情は抱いていないようでした。
そんな王子殿下とお近づきになったのは、魔法学の課題の時です。
ペアになる方が決まらない様子の殿下に、お声がけさせていただいたことがきっかけでした。
本来なら、妹殿下であるリリアナ様か、ルーナ様がペアを組まれるのが自然なのですが、リリアナ様はランスロット様と、ルーナ様はカイル様とペアになりたいだろうと、私は思ったのです。
一緒に課題に取り組むことになったライアン殿下は、それまでの噂と違い、真面目で気遣いも出来る、お優しい方でした。
そんな殿下に、少しずつですが惹かれてしまったことは事実です。
このアデライン王国が、王族でも身分に拘らず妃を選ぶことができるとはいえ、私は男爵家の娘で、しかも元々平民です。
王太子になるであろうライアン殿下に相応しくないことは、自分自身がよく分かっています。
ですが、ライアン殿下は私を望んでくださいました。
ずっとそばで守るからと、だから隣にいて欲しいと言って下さいました。
聖魔法所持者とはいえ元平民の私が、と思いましたがその頃には私もライアン様をお慕いするようになっていたのです。
「アナ、おめでとう。ライアンをよろしくね」
「ありがとうございます、王妃殿下。こちらこそよろしくお願いします」
「ふふっ。お義母様と呼んでちょうだい」
王妃様も私にとても優しくして下さり、厳しい王太子妃教育も頑張れることが出来ました。
「さぁ、ライアンやみんなが待っているわ」
そう言ったお義母様に手を取られて、控え室を後にします。
今から、王都を巡る成婚パレードです。
扉の前ではライアン様が待っていてくださいました。
「アナ」
「お待たせいたしました、ライアン様」
「夫婦になったのだから、ライアンと呼び捨ててくれ。愛称呼びも良いな」
にこやかに私の手を取りながら、そんなことをおっしゃるライアン様に、お義母様は苦笑されています。
「呼び捨ては駄目よ。陰口を言われたら辛いのはアナなのよ。愛称になさい」
そう言って送り出された扉の外は・・・
一面のフラワーシャワーでした。
色とりどりの花びらが宙を舞い、リリアナ様や皆様の歓声と拍手が響き渡ります。
「おめでとう」
宙に舞う花びらの向こう、私にお祝いの言葉をかけてくれたのは、ずっと会いたかった妖精姫でした。
男爵家の娘です。
といっても、私は元々は平民の子供でした。
それが聖魔法所持者とわかり、下位とはいえ貴族となり、貴族が通う学園に通うようになったのです。
その学園で出会ったのが、ルーナ・フィオレンサ様。
金色を帯びた瞳と銀髪、その美しい容姿から、月の妖精姫と呼ばれるお方でした。
王族のライアン王子殿下やリリアナ王女殿下に次いで、高貴な身分のルーナ様。
ですが、出会った時から優しく接して下さり、いつも気遣ってくださいました。
ルーナ様は、誰よりも王太子妃、王妃に相応しい方でした。
その魔力量も使える魔法も、淑女としてのマナーも知識量も、全てにおいて他を圧倒していたルーナ様。
ですが、ルーナ様が望まれたのは、王子殿下ではなく、いつもご一緒にいた従兄の侍従をされているカイル様でした。
王子殿下もルーナ様に、特別な感情は抱いていないようでした。
そんな王子殿下とお近づきになったのは、魔法学の課題の時です。
ペアになる方が決まらない様子の殿下に、お声がけさせていただいたことがきっかけでした。
本来なら、妹殿下であるリリアナ様か、ルーナ様がペアを組まれるのが自然なのですが、リリアナ様はランスロット様と、ルーナ様はカイル様とペアになりたいだろうと、私は思ったのです。
一緒に課題に取り組むことになったライアン殿下は、それまでの噂と違い、真面目で気遣いも出来る、お優しい方でした。
そんな殿下に、少しずつですが惹かれてしまったことは事実です。
このアデライン王国が、王族でも身分に拘らず妃を選ぶことができるとはいえ、私は男爵家の娘で、しかも元々平民です。
王太子になるであろうライアン殿下に相応しくないことは、自分自身がよく分かっています。
ですが、ライアン殿下は私を望んでくださいました。
ずっとそばで守るからと、だから隣にいて欲しいと言って下さいました。
聖魔法所持者とはいえ元平民の私が、と思いましたがその頃には私もライアン様をお慕いするようになっていたのです。
「アナ、おめでとう。ライアンをよろしくね」
「ありがとうございます、王妃殿下。こちらこそよろしくお願いします」
「ふふっ。お義母様と呼んでちょうだい」
王妃様も私にとても優しくして下さり、厳しい王太子妃教育も頑張れることが出来ました。
「さぁ、ライアンやみんなが待っているわ」
そう言ったお義母様に手を取られて、控え室を後にします。
今から、王都を巡る成婚パレードです。
扉の前ではライアン様が待っていてくださいました。
「アナ」
「お待たせいたしました、ライアン様」
「夫婦になったのだから、ライアンと呼び捨ててくれ。愛称呼びも良いな」
にこやかに私の手を取りながら、そんなことをおっしゃるライアン様に、お義母様は苦笑されています。
「呼び捨ては駄目よ。陰口を言われたら辛いのはアナなのよ。愛称になさい」
そう言って送り出された扉の外は・・・
一面のフラワーシャワーでした。
色とりどりの花びらが宙を舞い、リリアナ様や皆様の歓声と拍手が響き渡ります。
「おめでとう」
宙に舞う花びらの向こう、私にお祝いの言葉をかけてくれたのは、ずっと会いたかった妖精姫でした。
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