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最終話:私がそばにいたい人①

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「わ!見て、カイル!すっごく綺麗」

 目の前に広がる一面の真っ青な花畑。
歓声を上げるルーナに、カイルは苦笑いしながら頷く。

「あまりはしゃぐと危ないですよ」

「もう!また敬語になってる!私もカイルも、もう同じ平民なんだから普通に話してって言ってるでしょ」

「すみませ・・・ごめん」

 ぷくっと頬を膨らませるルーナを、カイルはそっと抱き寄せた。

 ルーナが王妃ヘスティアと話したあの夜、二人は屋敷に戻らずそのままルーナの転移魔法でアデライン王国を出た。

 最初に訪れたのは、アデライン王国から西にある王国だ。

 この国は、自然豊かで観光客で生計を立てているような国だ。

 そこの王族、次期国王である王太子が、少々難ありの人間だった。

 好戦的で、王族であるリリアナを娶って、アデライン王国を手中に収めようと考えているらしかった。

 フィオレンサ商会からの報告で、ルーナとカイルはアデライン王国を出た後は、アデラインの敵になりそうな国から回ることにしたのだ。

 いきなり王城の、国王の私室に転移したルーナに、国王は顔を真っ青にした。

 一国の、国王陛下の私室である。
簡単に立ち入ることはおろか、魔法での
転移など当然のことながら対策してある。

 そこに、安易に転移してきたのだ。

 ルーナは別にこの国に害意はない。
王太子が好戦的とはいえ、何もしていない。

 ルーナの目的は忠告だ。
もしも愚かな選択を王族の誰かがすれば、この国などあっという間に滅ぼせるのだという『忠告』

 王太子は好戦的であるが、父王である国王は、穏やかで公平な目を持った人間だった。

 だから、ルーナの忠告を素直に受け取った。

 王太子には、国内の令嬢との婚約を決め、他国への侵攻を行った場合には、処刑するとまで断言した。

 王位継承後のお目付役も決め、もしも王太子が国王になった後に愚かな行為をした場合は、お目付役たちの判断で断罪出来るように手筈を整えた。

 当の王太子は、穏やかな父親が何故いきなりそんな判断をしたのか驚きを隠せなかったが、従わなければ廃嫡とまで言われ、元より尊敬していた父の判断である。従うことにしたのだった。

 賢明な判断をした国王のおかげで、ルーナとカイルは忠告後にのんびりと観光することにした。

 一面の花畑に、歓声を上げるルーナ。
そこには公爵令嬢としての笑みではなく、一人の少女としての微笑みがあった。

 腕の中にある幸せに、カイル自身も笑みを浮かべる。

 父であったカサブランカ伯爵も、自分から後継の座を奪った弟も、全て処分を受けた。

 カイルも穏やかな気持ちで、目の前の花畑を見ることが出来ていたのだった。
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