悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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すぐには無理でも③

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「・・・私が愚かだったせいで、ライアンとリリアナは苦しんだのね」

 ヘスティアに言葉に、ルーナは曖昧な笑顔を向けた。

 漫画のストーリーでは、ルーナが婚約者となり、アナと出会ったライアンに断罪される。

 だから、政略的事項を避けるために、少々チートな能力を使い過ぎたところがあった。

 そのことが、ヘスティアがルーナに執着する一因だったことは間違いない。

 ヘスティアの偏った思いのせいで、リリアナが寂しい思いをしたことは事実だし、周囲が幽閉まで考えることになったことも事実だ。

 だけど、こうなるまで甘やかした国王陛下やマーガレットたちが悪かったことも事実。

 ヘスティアが更生するのなら、ルーナとしても別に彼女をどうこうするつもりはなかった。

 そんなことをして国外に出れば、ライアンやリリアナは、自分たちのためにルーナが辛い役目をしたと勘違いする。

 別にヘスティアをどうしようと、ルーナは傷つきはしないし多少の良心が痛むだけなのだが、そのことで友人たちが悲しむのはルーナの望むところではなかった。

「ヘスティア王妃殿下。先ほども申し上げた通りに、ライアン殿下が選ばれた女性は、優しく聡明で優秀な、努力家な女性です。彼女自身を、王妃として母としてどうか優しく導き支えてあげて下さいますね?」

「・・・ええ。努力するわ。ライアンが選び、貴女がそこまで言う令嬢なのですものね」

「約束ですよ?それから、リリアナ殿下が降嫁することで、フィオレンサ公爵家は今まで通りに王家をお支えします。爵位をランスロット兄様に移してもしばらくは父も母も従兄を支えることになっています」

「そう・・・そうね。フィオレンサ公爵は元々の伯爵位に戻られるのね。でもきっと陞爵されるのではないかしら?ルーナちゃ・・・ルーナ嬢が望むなら公爵位だって・・・」

 ヘスティアの言葉にルーナは首を横に振る。

「父も母も、多分爵位にはこだわらないと思います。公爵位を中継ぎしたのも、ランスロット兄様に継がせるためでしたし。それに、私は公爵家から籍を抜いてもらうつもりです」

「えっ?」

「私の好きな人は平民なので。それに、私は元々、貴族の令嬢というしがらみから放たれて、自由に生きていきたかったのです。好きなところに行き、好きなものを食べ、好きなものを見たかった。そのために、商会の仕事に力を入れ過ぎたことで、王妃殿下に過大な期待をもたせてしまったことは申し訳ありませんでした。でも、やっと、やっと、その夢が叶います」

 とても幸せそうに微笑うルーナに、ヘスティアは何も言うことが出来なかった。
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