悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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すぐには無理でも①

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「王妃殿下も、好きな人に嫁いだからこそ、これまで頑張って来られたのでしょう?」

 ルーナの言葉に、ヘスティアは目を見開いた。

 王太子妃候補から、アダムスと想いを交わして王太子妃となった。

 陛下はとてもお優しい方だったけど、王妃殿下は少し気難しい方で、王太子妃になったヘスティアはキツい物言いに夜に枕を涙で濡らすこともあった。

 そんなヘスティアを支えてくれたのが、夫であるアダムスと、学園時代の友人のマーガレットだった。

 ライアンとリリアナを授かったことで、王妃殿下の態度も軟化したが、あの時にヘスティアは思ったのだ。

 自分は息子の嫁に優しい人間になろうと。

 先王妃は別に、ヘスティアを嫌っていたわけではない。

 優秀ではあるものの、気が弱く依存性のあるヘスティアのことを、先王妃は心配していただけなのだ。

 王妃という立場は、優しいだけではやってはいけない。

 時には厳しく、人を切り捨てる判断ができなくてはならない。

 先王妃としては同じように優秀で、しかも王妃としての資質も持っているマーガレットにアダムスに嫁いで貰いたかった。

 だが、マーガレットがシリウス以外とは結婚しないと宣言したことと、アダムスがヘスティアを想っていたことで、それならばとヘスティアにキツく指導することにしたのだ。

 ヘスティアは元来、素直で優しい性格だ。

 だからライアンたちが生まれた時、嫡子が生まれたことを喜ぶ先王やアダムスたちと違い、ヘスティアを労りゆっくりと体を休めるようにと気遣ってくれた先王妃の優しさをちゃんと理解したのだ。

 どうして忘れていたんだろうか。

 そんな表情のヘスティアに、ルーナは声を封じた魔法を解除する。

 ヘスティアなら、少しは話が通じると判断したのだ。

「大声を出されれば、また封じます。まぁ、叫ばれても外には聞こえませんけど、お話が出来ませんから」

「・・・ええ。ごめんなさい。大人しくするわ」

「私を望んで下さったことに関しては、素直にお礼を申し上げます。身分や功績を考えても、判断は間違ってないと思います」

「・・・なら・・・いえ、ごめんなさい」

 ならばと言いかけたヘスティアは、先ほどライアンが愛する女性を見つけたと言った言葉を思い出し、口を噤んだ。

 ライアンは、ヘスティアにとって自慢の息子だ。

 そのライアンが選んだのなら、ルーナの言うように、優しく優秀で頑張り屋な令嬢なのだろう。

「リリアナ殿下は、次期フィオレンサ公爵となる、我が従兄のランスロットと想いを交わしました。喜んであげて下さいますね?」
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