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ある侍従のひとり言④
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「俺は貴女が好きなんです」
やっと。やっと言えた。
男として情けなかった俺だけど、やっと言葉にして伝えることが出来た。
ルーナ様が俺を恋愛の好きでないとしても、俺はもうこの人を手放したくない。
好意は持ってもらえているんだ。
男として好かれるように、これから隣で頑張っていけばいい。
目の前のルーナ様は、俺の告白にポカンとした表情をしていた。
そんな表情も可愛いな。
そう思ったら、ついその柔らかな頬に触れてしまっていた。
「あ!申し訳ありません。可愛いと思って、つい・・・」
「・・・」
慌てて引っ込めようとした俺の手に、小さな、俺の手で隠れてしまうような小さな手が重なる。
俺の手の温もりを感じるように、目を伏せたルーナ様から視線が外せない。
これはもしかして、俺は忍耐力を試されている?
大好きな人が目の前で目を閉じていて・・・
俺の手はルーナ様の頬に触れていて、ルーナ様は目を閉じていて。
自分の心臓の音がドクドクと頭の中に響く。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
心頭滅却すれば火もまた涼し!落ち着け!落ち着け、俺!
「あ・・・の、ルーナ様。お、俺も一応男なんで、そんな無防備になられると、ちょっと・・・」
ああ、情けない。
やっと告白できたというのに、ここで狼狽えてしまうなんて。
もっともっと、男として頼れる人間にならないと。
「ふふっ。ふふふっ」
可愛らしい笑い声に、俺は眉を下げる。
「笑わないでくださいよ。結構、いっぱいいっぱいなんですから」
「ごめんなさい。でも、嬉しくて。カイル。本当に私とずっと一緒にいてくれるの?」
そんな可愛らしい顔で、そんな可愛らしいことを聞くなんて。
俺のお姫様は、本当に可愛くてズルい。
ルーナ様がずっとそんなふうに笑っていられるように、俺はこれからもっともっと頑張らなきゃな。
「もちろんです。ルーナ様こそ俺を置いてどこかに行ったりしないでください」
「うん。約束ね」
俺の手から逃れたルーナ様が、ギュッと俺に抱きついた。
「ごめんね。学園を卒業させてあげられなくて」
「ルブラン公爵家に籍を置かせていただいているとはいえ、今の俺は平民です。本来なら通えなかった学園に通うこともできました。それに、ルーナ様の隣にいることの方が俺にとっては大切ですから」
ルーナ様が貴族令嬢のままなら、俺もちゃんと卒業資格を取って、ルーナ様が馬鹿にされない立場になりたかったけど、考えてみれば彼女は最初から貴族令嬢という立場に全く興味も持っていなかったんだよな。
「ありがとう、カイル。この国を出たら、もうルーナ様じゃなくてルーナと呼んでね」
「わ、わかりました。善処します」
ルーナ様は、笑って俺の背中に手を回す。
俺も折れそうな華奢な体を腕の中に閉じ込めた。
誰にも奪われないように。
どこにも行ってしまわないように。
やっと。やっと言えた。
男として情けなかった俺だけど、やっと言葉にして伝えることが出来た。
ルーナ様が俺を恋愛の好きでないとしても、俺はもうこの人を手放したくない。
好意は持ってもらえているんだ。
男として好かれるように、これから隣で頑張っていけばいい。
目の前のルーナ様は、俺の告白にポカンとした表情をしていた。
そんな表情も可愛いな。
そう思ったら、ついその柔らかな頬に触れてしまっていた。
「あ!申し訳ありません。可愛いと思って、つい・・・」
「・・・」
慌てて引っ込めようとした俺の手に、小さな、俺の手で隠れてしまうような小さな手が重なる。
俺の手の温もりを感じるように、目を伏せたルーナ様から視線が外せない。
これはもしかして、俺は忍耐力を試されている?
大好きな人が目の前で目を閉じていて・・・
俺の手はルーナ様の頬に触れていて、ルーナ様は目を閉じていて。
自分の心臓の音がドクドクと頭の中に響く。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
心頭滅却すれば火もまた涼し!落ち着け!落ち着け、俺!
「あ・・・の、ルーナ様。お、俺も一応男なんで、そんな無防備になられると、ちょっと・・・」
ああ、情けない。
やっと告白できたというのに、ここで狼狽えてしまうなんて。
もっともっと、男として頼れる人間にならないと。
「ふふっ。ふふふっ」
可愛らしい笑い声に、俺は眉を下げる。
「笑わないでくださいよ。結構、いっぱいいっぱいなんですから」
「ごめんなさい。でも、嬉しくて。カイル。本当に私とずっと一緒にいてくれるの?」
そんな可愛らしい顔で、そんな可愛らしいことを聞くなんて。
俺のお姫様は、本当に可愛くてズルい。
ルーナ様がずっとそんなふうに笑っていられるように、俺はこれからもっともっと頑張らなきゃな。
「もちろんです。ルーナ様こそ俺を置いてどこかに行ったりしないでください」
「うん。約束ね」
俺の手から逃れたルーナ様が、ギュッと俺に抱きついた。
「ごめんね。学園を卒業させてあげられなくて」
「ルブラン公爵家に籍を置かせていただいているとはいえ、今の俺は平民です。本来なら通えなかった学園に通うこともできました。それに、ルーナ様の隣にいることの方が俺にとっては大切ですから」
ルーナ様が貴族令嬢のままなら、俺もちゃんと卒業資格を取って、ルーナ様が馬鹿にされない立場になりたかったけど、考えてみれば彼女は最初から貴族令嬢という立場に全く興味も持っていなかったんだよな。
「ありがとう、カイル。この国を出たら、もうルーナ様じゃなくてルーナと呼んでね」
「わ、わかりました。善処します」
ルーナ様は、笑って俺の背中に手を回す。
俺も折れそうな華奢な体を腕の中に閉じ込めた。
誰にも奪われないように。
どこにも行ってしまわないように。
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