93 / 120
偽ヒロインの暴走
しおりを挟む
「おかしい!おかしい!おかしいッ!」
「おっ、おい。シシリー。どうしたというんだ?」
「落ち着いて?僕たちのお姫様。何がおかしいんだい?」
シシリーが地団駄を踏み、ダグラスとアレックスは困ったようにシシリーを宥める。
アレックスとダグラスにとってシシリーは女神だ。
愛らしいピンクブロンドの髪と瞳。
リゾーラ男爵家の次女で、自分たちが守るべき存在。
そのシシリーが、先日ライアンから拒絶されて以来、機嫌が悪い。
入学式で転んだシシリーを助けて以来、ライアンを筆頭に全員シシリーに好意的だった。
なのにいつのまにか、神官長子息のセドリックは自身の婚約者と常にいるようになり、シシリーから離れて行った。
ライアンも平民上がりの男爵令嬢と一緒にいるようになり、シシリーを拒絶した。
そこに魔獣が現れたことで、ダグラスとアレックスはシシリーを連れてその場から逃げ出した。
自分たちの役目は、愛しいシシリーを守ること。
そう考えて王族のライアンを守らない時点で、すでに側近として失格なのだが、シシリーに溺れた二人な気付かない。
「何で!何で?ライアン様の攻略は上手くいっていたはずなのに!そもそも悪役令嬢が婚約者じゃないから、イベントが上手くいかないのよ!リリアナだってブラコンのはずなのに、何だかランスロットと仲良くしてるし!ランスロットも、何で憎んでるはずのルーナと仲良しなの?絶対、あの女が何かしたんだ!」
「あの女?誰のことだ?シシリー」
「アナ・オフリーよ。ライアン様のそばにいるために、私の悪口とか言ったんだわ」
「平民上がりの男爵令嬢か。なら、俺たちがその男爵令嬢を学園から追い出してやろう」
たかが男爵令嬢。
脅せば怯えて学園に来なくなるだろう。
ダグラスはそう考えた。
だがシシリーは首を振る。
「あの女、フィオレンサ公爵令嬢とも仲が良いの。アレックス様やダグラス様がフィオレンサ公爵家に睨まれたら大変だわ」
「シシリーは本当に優しいな」
「なら、どうする?頭の良いシシリーのことだ。何かいい考えがあるのだろう?」
「ええ、アレックス様。あのね、ダグラス様とアレックス様には婚約者がいるでしょ?二人があの女と恋仲で、婚約破棄するって公言したら?あの女が二人を誑かしたってことにしたら?公爵家と侯爵家の嫡男を誑かして婚約破棄騒動を起こしたとなれば、ライアン様も目が覚めると思うの」
「なるほど。さすがシシリーだ」
頷いた二人は理解していない。
その騒動を起こせば、自分たちもただでは済まないということを。
そして、シシリーは二人がどうなろうと、ライアンを手に入れることしか考えてないということを。
「おっ、おい。シシリー。どうしたというんだ?」
「落ち着いて?僕たちのお姫様。何がおかしいんだい?」
シシリーが地団駄を踏み、ダグラスとアレックスは困ったようにシシリーを宥める。
アレックスとダグラスにとってシシリーは女神だ。
愛らしいピンクブロンドの髪と瞳。
リゾーラ男爵家の次女で、自分たちが守るべき存在。
そのシシリーが、先日ライアンから拒絶されて以来、機嫌が悪い。
入学式で転んだシシリーを助けて以来、ライアンを筆頭に全員シシリーに好意的だった。
なのにいつのまにか、神官長子息のセドリックは自身の婚約者と常にいるようになり、シシリーから離れて行った。
ライアンも平民上がりの男爵令嬢と一緒にいるようになり、シシリーを拒絶した。
そこに魔獣が現れたことで、ダグラスとアレックスはシシリーを連れてその場から逃げ出した。
自分たちの役目は、愛しいシシリーを守ること。
そう考えて王族のライアンを守らない時点で、すでに側近として失格なのだが、シシリーに溺れた二人な気付かない。
「何で!何で?ライアン様の攻略は上手くいっていたはずなのに!そもそも悪役令嬢が婚約者じゃないから、イベントが上手くいかないのよ!リリアナだってブラコンのはずなのに、何だかランスロットと仲良くしてるし!ランスロットも、何で憎んでるはずのルーナと仲良しなの?絶対、あの女が何かしたんだ!」
「あの女?誰のことだ?シシリー」
「アナ・オフリーよ。ライアン様のそばにいるために、私の悪口とか言ったんだわ」
「平民上がりの男爵令嬢か。なら、俺たちがその男爵令嬢を学園から追い出してやろう」
たかが男爵令嬢。
脅せば怯えて学園に来なくなるだろう。
ダグラスはそう考えた。
だがシシリーは首を振る。
「あの女、フィオレンサ公爵令嬢とも仲が良いの。アレックス様やダグラス様がフィオレンサ公爵家に睨まれたら大変だわ」
「シシリーは本当に優しいな」
「なら、どうする?頭の良いシシリーのことだ。何かいい考えがあるのだろう?」
「ええ、アレックス様。あのね、ダグラス様とアレックス様には婚約者がいるでしょ?二人があの女と恋仲で、婚約破棄するって公言したら?あの女が二人を誑かしたってことにしたら?公爵家と侯爵家の嫡男を誑かして婚約破棄騒動を起こしたとなれば、ライアン様も目が覚めると思うの」
「なるほど。さすがシシリーだ」
頷いた二人は理解していない。
その騒動を起こせば、自分たちもただでは済まないということを。
そして、シシリーは二人がどうなろうと、ライアンを手に入れることしか考えてないということを。
76
お気に入りに追加
708
あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと
淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品)
※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。
原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。
よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。
王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。
どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。
家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。
1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる)
3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
5.お父様と弟の問題を解決する。
それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc.
リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。
ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう?
たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。
これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。
【注意点】
恋愛要素は弱め。
設定はかなりゆるめに作っています。
1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。
2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

悪役令嬢、猛省中!!
***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」
――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。
処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。
今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!?
己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?!
襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、
誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、
誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。
今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる