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ある王子のひとり言③

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「母上は納得するだろうか」

 僕はフィオレンサ公爵令嬢と婚約しない。

 そう父上が母上に話してくれるそうだが、今の母上がそれで納得するだろうか。

 普段の母上は生粋のお嬢様という、ぽやぽやした感じの甘い人だ。

 多少は僕とリリアナの扱いの差はあったが、女親は息子に甘い、程度の差だった。

 それがいつのまにか僕を王太子にすることではなく、フィオレンサ公爵令嬢を自分の娘にすることに執着するようになった。

 多分だけど、リリアナが王女としてキチンと教育を受け、母上に甘えたりすることがなくなった事と、僕が王太子になればリリアナは降嫁し、手元にいなくなることに気付いたことがきっかけだと思う。

 今の母上は、父上やフィオレンサ公爵夫人の話もろくに聞こうとしないと聞く。

 フィオレンサ公爵令嬢は、アナ嬢が僕の婚約者となるにあたって、母上が何かするのではないかと懸念している。

 だから父上に決断を求めた。

 僕は、優しい母上のことは好きだ。
王妃としての公務もキチンとこなしているし、僕やリリアナのことも母親として愛してくれた。

 だから、そんな母上を離宮になど送りたくない。

 だけど王太子妃にはなりたくなさそうなのに、僕の求婚を受け入れてくれたアナ嬢が辛い目にあったりするのは嫌だ。

 もし、アナ嬢に酷いことを言ったりすれば、僕は母上のことを嫌いになってしまうかもしれない。

 アレックスとダグラスを側近から外したことで、僕は新たに側近も迎えなければならない。

 ロックベル侯爵家の次男は僕と年が離れているし、セルビア公爵家は息子はアレックスだけだ。
 さすがに、ご令嬢を僕の側近には出来ない。

 アデライン王国は女性でも爵位は継げるから、婿をもらってセルビア公爵の女公爵になるのだろう。

 僕も・・・もしかしたら、いや、あのままアナ嬢やフィオレンサ公爵令嬢と親しくならなければ、同じように廃籍されていただろう。

 母上がいくら僕を庇おうと、愚かにも魅了にかかり、国に悪影響を与える存在になれば、王族ではいられない。

 いや。
母上も庇ってくれないかもしれない。

 フィオレンサ公爵令嬢にこだわっている母上だ。
 以前、注意を受けた時のように、烈火のごとく怒り狂うだろう。

「お母様はルーナ様に執着しているから・・・難しいかもしれませんね。お父様が言うには、お母様は昔から思い込みが激しい性格だったらしいわ。普段は穏やかな性格で、幸いにもそれが表立って出る機会がなかっただけで、お父様にも相当執着していて、他の令嬢と話など出来なかったらしいの」

「そうなのか。父上と母上は婚約者だったから、それが問題にならなかったんだな」

 母上が納得してくれればいい。
そう願うばかりだ。

 
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