悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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ある侍従のひとり言③

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「僕もお前も甘え過ぎだ」

 ランスロット様のその言葉に、俺は何も言えなかった。

 自分が、ルーナ様なら理解ってくれる、ルーナ様なら俺が決断できるまで待っていてくれる、そんな甘えを持っていたことを本当は気付いていたから。

 ライアン殿下が婚約者を決められて立太子し、ランスロット様にリリアナ殿下が嫁げば、ルーナ様は自由になる。

 そんなことを考えていた。

 そんなわけないこと、少し考えればわかることなのに。

 あの王妃殿下が、簡単にルーナ様を諦めるわけがない。

 オフリー嬢との婚約者の枷になることを考えて、ルーナ様がこの国から出て行くことはあり得ることなのに、それから目を背けていた。

 ランスロット様の侍従である自分から、離れていかないだろうという甘えがあったんだ。

 ルーナ様は、俺のことを想ってくださっている。

 だけど同じように、ご友人たちのこともランスロット様たち家族のことも思っている。

 自分の存在が足枷になると判断したら、学園の卒業なんて待たずにアデライン王国から出て行ってしまうだろう。

 ルーナ様がいなくなる。

 ルーナ様は、見た目通りの儚いご令嬢ではない。

 ひとりで白馬に乗って領地にやって来たり、魔獣を狩るような、行動的な人だ。

 俺の曖昧な態度のせいで、ルーナ様に俺の気持ちは伝わっていない。

 ルブラン公爵家に籍を置けているのは、俺が学園に通えるようにとのルーナ様のお心遣いであって、俺は平民でしかない。

 公爵家の至宝を娶れる立場ではない。

 それが言い訳だと、本当はわかっている。

 俺はルーナ様と一緒になって、その時に周囲からルーナ様が馬鹿にされるのが嫌なだけだ。

 公爵家のご令嬢が平民なんかと、なんていうやつだって必ずいる。

 あの素晴らしい人を、自分のせいで単なるやっかみでも悪く言われたくないんだ。

「ルーナが決断したら、僕たちにも何も言わずにいなくなることは間違いない。僕たちに相談すれば止められることは分かっているからな。手紙ひとつ残していなくなる。いいのか?次に会えた時にはルーナの隣には誰かいるかもしれない」

「ランスロット様」

「僕のことは大丈夫だ。お前やルーナ、叔父上たちはずっと僕を支えてくれた。もう僕は、間違った判断はしない。亡くなった父上や母上に胸をはれる、そんな公爵になる。だから、安心してルーナについて行け」

 ランスロット様は、ご両親を事故で亡くして、とても辛い思いをしていた。

 そのランスロット様を支えるために俺はフィオレンサ公爵家のお世話になることになった。

 あの昏い目をしていた、ランスロット様はもういない。

 俺も俺にできることをやるべきだ。
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