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ある王子のひとり言②
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「お前たちは想う相手はいるのか?」
そう父上に尋ねられ、頭に浮かんだのはシシリーではなくオフリー嬢だった。
シシリー、いやリゾーラ嬢とはあれ以来顔を合わせていない。
アレックスやダグラスとも授業の時以外に、顔を合わせることはない。
アレックスの父親であるセルビア公爵と、ダグラスの父親であるロックベル侯爵は、それぞれ二人を廃籍すると決めたらしい。
婚約者とも婚約解消したそうだ。
二人は知らないらしいが。
多分、僕もあのままリゾーラ嬢と共にいたら、廃籍されていたことだろう。
王族である僕や、高位貴族であるアレックスたちには、叔父上である神官長から魅了防御の魔法がかけられている。
だから、リゾーラ嬢の持つ魅了の魔法は、彼女に強い好意を抱かなければ、僕たちがかかることはない。
その証拠に従兄弟のセドリックは、最初こそ僕達と共にリゾーラ嬢と一緒にいたが、途中から行動を共にしなくなった。
ランスロットなどは、最初からリゾーラ嬢に嫌悪感を持っていたし、カイルも同じだ。
結局は、僕やアレックス、ダグラスが愚かだった。それだけのことだろう。
僕が廃籍を免れたのは、フィオレンサ公爵令嬢やオフリー嬢と行動を共にするようになったからだ。
聖魔法使いだというオフリー嬢。
彼女のそばにいると、息がとてもしやすい。
リゾーラ嬢を可愛いと、好ましいと想っていた時のような、靄がかかったような息苦しを感じない。
それは、彼女が僕に対して好意を抱いてないからなのかもしれないが。
しかし、だからこそオフリー嬢に好意を抱いていると口にしてはいけない気がした。
本人には伝えてしまったが、国王陛下である父に伝えれば、聖女である彼女は王太子妃候補として見られてしまう。
いや。
父はいいのだ。問題なのは・・・
「私は、想う方がいますが、その方は王配になることを望んでいらっしゃいません。できることなら、兄に立太子していただき、私はその方に嫁ぐことが出来ればと思っています」
リリアナの言葉に、ハッと意識を戻す。
ランスロットならば、王配として十分なのだが、本人は公爵位を継ぐことを望んでいると聞くと、無理強いも出来ない。
僕が立太子するとなると、母がまたフィオレンサ公爵令嬢を婚約者にと煩くなるだろう。
リゾーラ嬢とのことを問題視され、リリアナが立太子してくれた方が、結果的に良い気がするのは、自分の勝手だろうか。
フィオレンサ嬢のことを嫌いなわけではない。
事実としてすごいと思うし、容姿だって好ましいと思う。
ただ彼女には思う相手がいるのと、自分には合わない気がする、というだけだ。
そう父上に尋ねられ、頭に浮かんだのはシシリーではなくオフリー嬢だった。
シシリー、いやリゾーラ嬢とはあれ以来顔を合わせていない。
アレックスやダグラスとも授業の時以外に、顔を合わせることはない。
アレックスの父親であるセルビア公爵と、ダグラスの父親であるロックベル侯爵は、それぞれ二人を廃籍すると決めたらしい。
婚約者とも婚約解消したそうだ。
二人は知らないらしいが。
多分、僕もあのままリゾーラ嬢と共にいたら、廃籍されていたことだろう。
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だから、リゾーラ嬢の持つ魅了の魔法は、彼女に強い好意を抱かなければ、僕たちがかかることはない。
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ランスロットなどは、最初からリゾーラ嬢に嫌悪感を持っていたし、カイルも同じだ。
結局は、僕やアレックス、ダグラスが愚かだった。それだけのことだろう。
僕が廃籍を免れたのは、フィオレンサ公爵令嬢やオフリー嬢と行動を共にするようになったからだ。
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それは、彼女が僕に対して好意を抱いてないからなのかもしれないが。
しかし、だからこそオフリー嬢に好意を抱いていると口にしてはいけない気がした。
本人には伝えてしまったが、国王陛下である父に伝えれば、聖女である彼女は王太子妃候補として見られてしまう。
いや。
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「私は、想う方がいますが、その方は王配になることを望んでいらっしゃいません。できることなら、兄に立太子していただき、私はその方に嫁ぐことが出来ればと思っています」
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フィオレンサ嬢のことを嫌いなわけではない。
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