悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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陛下と王妃と王子と王女

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「ライアン、リリアナ。今日はお前たちの婚約者について話がある」

 国王陛下に呼び出された二人は、国王の執務室で父親と向かい合っていた。

 この場に母である王妃の姿はなく、扉の外に護衛騎士は立っているが、部屋の中は三人だけである。

 父親ではあるが、一国の王である。
呼ばれた場所が執務室ということで、ライアンたちは子供としてでなく、臣下として礼をとった。

「はい」

「話の前に聞いておきたい。魔法学の課題のアレは、本当にお前たちの発案か?」

「・・・」

 ルーナとは、発案をライアンとリリアナだということにする、と話し合い済みである。

 それはルーナの価値をこれ以上上げることで、ライアンとの婚約話が再燃することを防ぐためだった。

 ライアンもリリアナも、ルーナの功績を奪うような真似をしたいわけではない。

 だが、もしライアンとの婚約を強要されたら、ルーナはさっさとこの国から逃げてしまうだろう。

 ルーナがカイルのことを想っていることは、ライアンもリリアナも分かっていた。

 ライアンとしては、この国の王族として、優秀なルーナを王太子妃にすることは正しいことだと思ってはいても、友人としてランスロットやアナたちと過ごす楽しさを失うことに躊躇していた。

 リリアナの方は、ルーナのことを今は大切な友人だと思っているし、彼女が嫌がることをしたくない。

 王族として正しくないのかもしれないが、出来るならライアンに立太子してもらい、自分はランスロットの妻としてルーナと親戚になりたいと思っている。

 だが父親には嘘をつけるが、国王陛下に嘘をつくことは出来ない。

 口を開こうとしない二人に、国王であるアダムスは、ため息を吐いた。

「真っ直ぐ育っていることを、父親として喜ぶべきなのか。王族として上手く誤魔化せないことを国王として嘆くべきなのか」

「申し訳ありません」

「まぁ、いい。確かには、王太子妃そして王妃としての能力は桁違いだろう。国に与える恩恵も大きい。だが、敵に回せば、この国など簡単に衰退する。彼女の望みを上手く叶えつつ、アデライン王国に恩恵を与えてもらえるように、お前たちはいい関係を築きなさい」

 ライアンとリリアナは、お互い顔を見合わせた。

「国王陛下・・・いえ、父上。このことを母上には?」

「アレに知られるとまたフィオレンサ公爵夫人に迷惑をかけることになる。そうでなくてもお前たちがフィオレンサ公爵家に赴いていたことで、また婚約だのなんだのと言い出しておるのだ。それで、そろそろはっきりとしておこうと考えた。ライアン、リリアナ。お前たちに想う相手はいるのか?」
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