悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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秒殺

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「ギャギャギャギャ!」

 アナは自分が攻撃されようとしていても、ライアンを癒すことをやめようとしない。

「にげ・・・ろ」

 ライアンが自分の身でアナを守ろうとするが、逆にアナはその背に覆い被さるようにしながら治療を続けていく。

「ひっ!に、逃げ」

 ヘリオは、腰を抜かしながらズリズリと後ずさる。

 アレックスとダグラスは一応は攻略対象らしく、シシリーを守るように立ってはいるが、それでもライアンのところまでは駆け寄ろうとしない。

「ギャギャギャ・・・ギャ?」

 アナに、その爪を振り下ろそうとした瞬間。

 ボシュ!

 魔獣は一瞬にして消滅した。

「・・・へ?」

 ダグラスたちから間抜けな声がもれた。

 それはそうだろう。
今、そこにいた脅威が一瞬にして消えたのだ。

 シシリーもポカンと口を開けたまま固まっている。

「アナ様!お兄様!大丈夫ですか?」

「アナ嬢。殿下の怪我は?」

 リリアナとランスロットがふたりに駆け寄り、ライアンに手を貸す。

「大丈夫だ。オフリー嬢、怪我は?」

「私は大丈夫です。それよりも傷は癒えましたが、失われた魔力や血液は戻りません。今日はもう王宮に戻られて休まれた方が良いと思います」

「いや、だが、先ほどの魔獣は・・・」

 アナの聖女としての癒しは、怪我や病気を癒すことは出来るが、怪我の際に失われた血や魔力の補充までは出来ない。

 それらは体を休めることで、ゆっくりと完治させていくしかないのだ。

 ランスロットの手を借りて立ち上がったライアンは、多少ふらつきながらも魔獣の発現を気にしていていた。

 姿が消えたが、また現れるかもと心配しているのだろう。

「報告は僕らでしておきます。殿下は今日はもう休まれるべきです」

「しかし・・・分かった。このままいても邪魔になるだけだな。後のことはリリアナ、頼む」

「もちろんですわ。お兄様をお願いね」

 リリアナはライアンの護衛兼従者を呼ぶと、そのまま王宮へと連れ帰るように伝える。

 ライアンが立ち去った後、ルーナたちも報告のために学園長室に向かうことにした。

 学園内に現れた異形の魔獣。
調査が入ることになる。

 乙女ゲーム内では、一度しか現れなかったが、異形化していたこともあるし、そもそもここは乙女ゲームではない。

 危険があるわけだから、調査しないわけにはいかないだろう。

「アナ様。アナ様のその姿勢はとても好ましいですけど、無茶はなさらないで下さい」

「ええ、本当に。お兄様を守ろうとして下さったことはありがたいですけど、それでアナ様が傷付けば兄も悔やみます」

 ルーナとリリアナがそう言ってアナに注意するが、当のアナはにっこりと微笑んだ。

「ルーナ様がいらしたので、私はなんの心配もしていません」

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