悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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ある侍従のひとり言②

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 ルーナお嬢様は、突然突飛な発想をする。

 そして、俺が全く分からない言葉を時々使う。

 ランスロット様曰く、俺はルーナお嬢様の『推し』なのだそうだ。

 おし?推しってなんだ?

 ルーナお嬢様付きの侍女ユリシーナさんが言うには、推しとは崇高な存在なのだそうだ。

 じゃあ俺のことじゃなく、それはルーナお嬢様のことなんじゃないか?

 推しの幸せは自分の幸せで、推しのためなら何でもできる、のだそうだ。

 なら、やっぱり推しとやらはルーナお嬢様のことじゃないか。

 伯爵家の嫡男として生まれたのに、母が亡くなった途端、父親は愛人と愛人の子供を伯爵家に迎え入れた。

 しかも、その子供に伯爵家を継がせる、と。

 だから、父親も家も捨てた。
孤児院に身を寄せるしかなかった俺を救いあげてくれたのは、ルーナお嬢様だ。

 美しくて優しくて、ちょっと高位貴族の令嬢らしくないところも、全部がお嬢様の魅力だ。

 崇高な存在で、自分の幸せよりその人の幸せを願いたくなるんだろ?

 じゃあやっぱり、ルーナお嬢様が推しなんじゃないか。

 お嬢様は俺に多くのものを与えてくれた。

 ランスロット様の侍従として生きる道も。

 平民になったことで通えないはずの学園にだって、奥様の実家であるルブラン公爵家の籍を与えてくれて、通えるようにして下さった。

 ルーナお嬢様もだけど、旦那様も奥様も、ランスロット様も、それから使用人のみんなも、俺のことを見下げたりしない。

 父親だった男のように。

 後妻に入った愛人のように。

 同い年の、俺からカサブランカ伯爵家を奪った弟のように。

 みんな俺を、カサブランカ伯爵家から廃籍された平民、と見たりしない。

 俺のことを、ただのカイルというひとりの人間として見て接してくれる。

 学園で知り合った、リリアナ王女殿下にしてもそうだ。

 事情は知っているだろうに、普通にクラスメイトとして接してくれる。

 最初は高飛車な王女だと思っていたけど、ルーナお嬢様は「リリアナ殿下は、反論できる立場の人間にしか言ったりしないわ」と言うから。

 確かに、ルーナお嬢様が親しくなろうとしているアナ・オフリー男爵令嬢には何も言わなかった。

 そのうち、王女殿下はお嬢様に謝罪され、親しく過ごされるようになった。

 リリアナ殿下は、ランスロット様のことがお好きなのだそうだ。

 ランスロット様も悪い気はしないみたいだけど、簡単には婚約に踏み切れないみたいだ。

 というのも、リリアナ殿下の双子の兄であるライアン殿下が妙な男爵令嬢にご執心だからだ。

 俺には理解出来ない。
ルーナお嬢様ならともかく、あんなのに興味を持つなんて。

 俺としては重畳だけど。
ルーナお嬢様はどうやら殿下の婚約者にはなりたくないらしいから。

 ルーナお嬢様は俺の宝物だ。
あの方が笑ってくれるなら、なんだって叶えたい。
 
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