49 / 120
大切なのは見誤らないこと
しおりを挟む
「セドリック様」
「え?あ?アマリア・・・どうしてここに」
それはもちろん、ルーナの指示でアナが呼んできたのである。
だが、アマリアが好きだと公言したのを聞かれたセドリックは恥ずかしく、またそれを聞いたアマリアも恥ずかしくて、二人して顔を赤らめるばかりだ。
「大切なことはキチンと言葉にしてお伝えしないと、失ってしまってからでは遅いですわよ。アナ様、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てたのなら良かったです」
「アデライン様。アマリア様に感謝して下さいませね。アマリア様がアデライン様と婚約を解消は絶対しないとおっしゃるからお力になることにしたんですのよ」
ルーナにとって大切で守るべきなのは、カイルとランスロットのみ。
それでも、アナやアマリアがどうなってもいいなどとは考えていない。
もっとも、その他大勢や自分の大切な人に悪意のある人間はどうなろうと知ったことではないが。
「これを」
ブレスレットをセドリックに差し出す。
「これ、は?」
「魔道具ですわ。ランス兄様とカイルも同じモノを付けています。おそらくですが、リゾーラ様は魅了系の魔力を持っていると思われます」
「え?でも、王家には魅了封じの魔法がかけられているはずですのに」
ルーナの言葉にリリアナは首を傾げた。
リリアナの言う通り、アデライン王家にはセドリックの父親である神官長が魅了封じの魔法をかけている。
つまりは、息子であるセドリックにもその魔法はかけられているわけで。
「そ、そうだよ。父上がかけている」
「ええ。だから、あの程度で済んでいるんです。殿下もリゾーラ様に触れられることは避けていて、アデライン様も不快に感じられましたわね。リゾーラ様が意図してその魔法を使っているのかは分かりません。ですが、彼女の持つ力は絶大です。だからこそ、アデライン公爵様の魔法ですら防ぎきれない」
「それ・・・は、じゃあこの魔道具は」
神官長がかけた魔法をも上回るというシシリーの魔法の力。
なのに、それを理解した上で渡される魔道具。
「ルーナの魔道具を持てば、神官長殿の魔法も相まって、あのリゾーラ嬢の力に打ち勝てるはずだ。信じる信じないは自由だけど、婚約者を失いたくないなら受け取るべきだと僕は思う」
「私からもお願いします、セドリック様。ルーナ様は真摯に私のことを心配して下さったのです。私は、セドリック様のことを信じております。それでも、他のご令嬢と共にいらっしゃる姿を見るのは悲しかった」
婚約者アマリアの言葉に、セドリックは渡されたブレスレットを左腕に装着した。
効く効かないではない。
婚約者の憂いが晴れるなら、何でもするべきだ。
そう思ったのだ。
「え?あ?アマリア・・・どうしてここに」
それはもちろん、ルーナの指示でアナが呼んできたのである。
だが、アマリアが好きだと公言したのを聞かれたセドリックは恥ずかしく、またそれを聞いたアマリアも恥ずかしくて、二人して顔を赤らめるばかりだ。
「大切なことはキチンと言葉にしてお伝えしないと、失ってしまってからでは遅いですわよ。アナ様、ありがとうございます」
「いえ、お役に立てたのなら良かったです」
「アデライン様。アマリア様に感謝して下さいませね。アマリア様がアデライン様と婚約を解消は絶対しないとおっしゃるからお力になることにしたんですのよ」
ルーナにとって大切で守るべきなのは、カイルとランスロットのみ。
それでも、アナやアマリアがどうなってもいいなどとは考えていない。
もっとも、その他大勢や自分の大切な人に悪意のある人間はどうなろうと知ったことではないが。
「これを」
ブレスレットをセドリックに差し出す。
「これ、は?」
「魔道具ですわ。ランス兄様とカイルも同じモノを付けています。おそらくですが、リゾーラ様は魅了系の魔力を持っていると思われます」
「え?でも、王家には魅了封じの魔法がかけられているはずですのに」
ルーナの言葉にリリアナは首を傾げた。
リリアナの言う通り、アデライン王家にはセドリックの父親である神官長が魅了封じの魔法をかけている。
つまりは、息子であるセドリックにもその魔法はかけられているわけで。
「そ、そうだよ。父上がかけている」
「ええ。だから、あの程度で済んでいるんです。殿下もリゾーラ様に触れられることは避けていて、アデライン様も不快に感じられましたわね。リゾーラ様が意図してその魔法を使っているのかは分かりません。ですが、彼女の持つ力は絶大です。だからこそ、アデライン公爵様の魔法ですら防ぎきれない」
「それ・・・は、じゃあこの魔道具は」
神官長がかけた魔法をも上回るというシシリーの魔法の力。
なのに、それを理解した上で渡される魔道具。
「ルーナの魔道具を持てば、神官長殿の魔法も相まって、あのリゾーラ嬢の力に打ち勝てるはずだ。信じる信じないは自由だけど、婚約者を失いたくないなら受け取るべきだと僕は思う」
「私からもお願いします、セドリック様。ルーナ様は真摯に私のことを心配して下さったのです。私は、セドリック様のことを信じております。それでも、他のご令嬢と共にいらっしゃる姿を見るのは悲しかった」
婚約者アマリアの言葉に、セドリックは渡されたブレスレットを左腕に装着した。
効く効かないではない。
婚約者の憂いが晴れるなら、何でもするべきだ。
そう思ったのだ。
121
お気に入りに追加
705
あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
我慢するだけの日々はもう終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。
学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。
そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。
※本編完結しましたが、番外編を更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる