悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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え?あの子、誰ですか?

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 ランスロットもカイルも、不用意にヒロインには近付かないと約束してくれ、ルーナは安心して教室へと向かった。

 ルーナやランスロットたちのクラスはSクラスで、入学試験の成績が上位の者が入る。

 男爵令嬢にのぼせ上がって婚約者を蔑ろにする攻略対象だが、とりあえず優秀なのは優秀なのである。

 そしてルーナが教室に入って見たのは・・・

「誰、あれ?」

 思わず漏れてしまった声に、後ろに付いていたユリシーナが答える。

「先程、正門にて殿下に助けられたご令嬢、リゾーラ男爵家の次女のシシリー様でございます」

 ライアン殿下に、ダグラス・ロックウェル侯爵令息、アレックス・セブリア公爵令息、セドリック・アデライン公爵令息に囲まれているのは、ピンクブロンドの髪と瞳をした少女で・・・

 ルーナは首を傾げた。
この乙女ゲームのヒロインは、黒髪黒目のはず。

 乙女ゲームには珍しく黒髪黒目で、聖女と呼ばれるところが前世の巫女のイメージとピッタリで、ルーナもヒロインのビジュアルは気に入っていた。

 名前もアナ・オフリー男爵令嬢なはずなのに、シシリー・リゾーラ?

 キョロキョロとヒロインのはずの令嬢を探す。

 すぐにヒロインは見つかった。

 この世界、黒髪は珍しいのだ。
まぁ、ピンクの髪も他にいないが。

 真っ直ぐな黒髪を腰まで伸ばし、背もピンと伸ばしている。

 キャッキャッと攻略対象たちと楽しそうに声を上げている男爵令嬢を、憎々しげに見ている令嬢は多い。

 それはそうだろう。
公爵令息ふたりにも、侯爵令息にも婚約者がいる。

 そのことは貴族なら知っていることで、当の婚約者が同じ教室にいるのだ。

 彼女たちの友人たちは、男爵令嬢だけでなく攻略対象たちも射殺さんばかりのキツい視線を向けている。

 他のご令嬢たちの中には、婚約者のライアン殿下の婚約者の座を狙っている者たちもいるのだろう。

 教室の中は、どこか殺伐とした雰囲気であった。

 そんな中その誰にも、いや教室の前列中央で賑やかな偽ヒロインにも目を向けることなく、窓際の席でジッと身動きすらしない少女、それがアナ・オフリー男爵令嬢だった。

 ルーナは、乙女ゲームのヒロインが嫌いである。

 婚約者のいる攻略対象と恋仲になり、それを当然のことと思っているヒロインが、嫌いである。

 だが今目の前にいるのは、攻略対象に目を向けないヒロインと、婚約者がいる高位貴族に媚びる偽ヒロイン。

 ルーナの判断は早かった。

「隣、座ってもよろしくて?私、ルーナ・フィオレンサ。フィオレンサ公爵家の娘ですわ」

 振り返った黒目と目が合った。
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