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ヒロインと攻略対象たち
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「きゃっ!」
会場に向かう遥か後ろで、声が聞こえた。
周囲は何事かと足を止めたり振り返るが、ルーナは足も止めないし、振り返りもしない。
「何かあったのかな?」
「ランス兄様、振り返らないで」
ルーナの声に、足を止めかけたランスロットはそのままルーナの隣に再び並んだ。
その指示に、カイルも足を止めずにユリシーナと共に二人に続く。
学園の正門付近。
黒髪黒目の少女に手を差し出す、金髪に赤い瞳の王子様。
乙女ゲームの出会いイベントである。
この乙女ゲーム、それぞれにイベントは発生するのだが、出会いイベントのみ攻略対象全員とヒロインが出会うのだ。
漫画の中ではルーナを毛嫌いしているランスロットは、ライアン殿下たちと共に会場入りをする。
正門で勢揃いした攻略対象たちの前で、黒髪黒目のヒロインは派手に転ぶのである。
誰かに突き飛ばされたとかでもなく、何でもない場所でいきなり転ぶ貴族の令嬢。
ないわ~、とこの世界に赤子として転生したルーナは思った。
貴族令嬢は、走らない。
足が見えるのはふしだらとされていて、ルーナもドレスではない今は編み上げのブーツを履いている。
下位貴族なので、侍女が同伴していないのは仕方ないが、殿下や他の子息に足を見せた上、その手を借りて立ち上がるのはいかがなものかとルーナは思う。
その新鮮さに、殿下たちはヒロインに興味を持っていくのだが。
ルーナは、その大事な出会いイベントにランスロットを立ち合わせるつもりはなかった。
ランスロットには、できれば彼が心惹かれることが出来る、高位貴族のご令嬢と婚約させたいのだ。
別にランスロットが好きなのなら、ヒロインでも構わない。
ただし、他の攻略対象と接触しないなら、だ。
ビッチに大事な従兄をやるつもりはない。
「男爵令嬢が転んだそうです。そばにいた殿下が自ら手を差し出されたとか」
近くを通る他の侍女から聞いたユリシーナが、前を歩くルーナたちに伝える。
小さく頷くと、ルーナは足を止めてランスロットとカイルに向き直った。
「彼女にはまだ近づかないで。危険がないと分かったら教えますわ」
ビッチは困るけど、普通の・・・公爵家後継の婚約者に相応しそうな人間なら、交流することを止めるつもりはない。
暗にそう言ったルーナに、ランスロットとカイルは頷く。
「ルーナの指示に従うよ。それに、殿下自らが手を差し出したんだろ?側妃にでもするつもりなのかな」
「殿下はまだ婚約者がいらっしゃいませんから、別に咎め立てすることもないでしょう。ですが、婚約者を決めるより先に身分の低い令嬢と親しくなられると、婚約者は王命になるかもしれませんね」
会場に向かう遥か後ろで、声が聞こえた。
周囲は何事かと足を止めたり振り返るが、ルーナは足も止めないし、振り返りもしない。
「何かあったのかな?」
「ランス兄様、振り返らないで」
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その指示に、カイルも足を止めずにユリシーナと共に二人に続く。
学園の正門付近。
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誰かに突き飛ばされたとかでもなく、何でもない場所でいきなり転ぶ貴族の令嬢。
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貴族令嬢は、走らない。
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下位貴族なので、侍女が同伴していないのは仕方ないが、殿下や他の子息に足を見せた上、その手を借りて立ち上がるのはいかがなものかとルーナは思う。
その新鮮さに、殿下たちはヒロインに興味を持っていくのだが。
ルーナは、その大事な出会いイベントにランスロットを立ち合わせるつもりはなかった。
ランスロットには、できれば彼が心惹かれることが出来る、高位貴族のご令嬢と婚約させたいのだ。
別にランスロットが好きなのなら、ヒロインでも構わない。
ただし、他の攻略対象と接触しないなら、だ。
ビッチに大事な従兄をやるつもりはない。
「男爵令嬢が転んだそうです。そばにいた殿下が自ら手を差し出されたとか」
近くを通る他の侍女から聞いたユリシーナが、前を歩くルーナたちに伝える。
小さく頷くと、ルーナは足を止めてランスロットとカイルに向き直った。
「彼女にはまだ近づかないで。危険がないと分かったら教えますわ」
ビッチは困るけど、普通の・・・公爵家後継の婚約者に相応しそうな人間なら、交流することを止めるつもりはない。
暗にそう言ったルーナに、ランスロットとカイルは頷く。
「ルーナの指示に従うよ。それに、殿下自らが手を差し出したんだろ?側妃にでもするつもりなのかな」
「殿下はまだ婚約者がいらっしゃいませんから、別に咎め立てすることもないでしょう。ですが、婚約者を決めるより先に身分の低い令嬢と親しくなられると、婚約者は王命になるかもしれませんね」
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