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推しを守るための策を
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アデライン王国王立学園入学式。
色とりどりのドレスやスーツが目に痛いと、ルーナは馬車からおりたまま立ち止まった。
「ルーナお嬢様?どうされましたか?」
「・・・いえ。何でもないわ。お待たせしました、ランス兄様、カイル、行きましょう?」
カイルは普通なら伯爵家から籍を抜いているので、入学式には出れない。
だが、高位貴族が侍従や侍女として連れてきているのは、ほとんど伯爵家や子爵家などの三男や三女という者たちだ。
つまりは貴族なわけで、侍従や侍女といえど学園に通う義務がある。
カイルも本来ならカサブランカ伯爵子息として、学園に通うはずだったのだ。
当然、推しが肩身の狭い思いをするのを放置するようなルーナではない。
母親の実家、ルブラン公爵家の養子としてもらっていた。
もちろんルブラン公爵家には嫡子もいるし、カイルをルブラン公爵家の正式な子供にするわけではない。
あくまでも、カイルが道を選ぶまでの『役職』みたいなものである。
フィオレンサ伯爵家でも良かったのだが、できることならカサブランカ伯爵家より爵位を上にしたかったのだ。
カサブランカ伯爵が後継にすると言った愛人の息子も、今年入学なのである。
侍従の役目は担ってもらうが、生徒として授業は受けられるように、公爵家に籍を置いた。
ルーナは別に、カサブランカ伯爵家の後継となった愛人の息子に何かするつもりはない。
あちらがカイルに何もしてこなければ、だが。
ちなみに、ルーナの専属侍女のユリシーナは、ルーナたちより三歳年上で、入れ違いで学園は卒業していた。
濃紺のお仕着せを着たユリシーナは、ルーナたちの後ろを静々と歩いている。
学園に通う年齢ではない侍従や侍女は、授業中は待機室で待つ。
当初はカイルも、その予定だった。
だがルーナは、両親がランスロットのためにカイルに嫌な思いをさせることを気に病んでいることに気付いていた。
ルーナ自身は、カイルはそんな弱い人間ではないし、何かしてくるような馬鹿は自分が潰すつもりだったのだが、いずれ伯爵家を継ぐ可能性があるのなら、学園を卒業させておく方が良いと思い直した。
それゆえの、ルブラン公爵家との養子縁組である。
ルーナはヒロインや攻略対象たちの動きにも、気を配らなければならない。
ヒロインが、ライアン王子を攻略してくれればいい。
漫画と違い、彼には現在婚約者はいないのだから。
だが他の婚約者のいる攻略対象に手出しするようなら、警戒しなくてはならない。
ルーナは聖人君子ではないから、自分の大切な人間以外はどうなってもいいし、最悪ろくでもないヒロインが王太子妃になったなら、この国など出て行くつもりだが。
忙しいルーナとしては大切な推しの安全を、盤石にしておきたいのである。
色とりどりのドレスやスーツが目に痛いと、ルーナは馬車からおりたまま立ち止まった。
「ルーナお嬢様?どうされましたか?」
「・・・いえ。何でもないわ。お待たせしました、ランス兄様、カイル、行きましょう?」
カイルは普通なら伯爵家から籍を抜いているので、入学式には出れない。
だが、高位貴族が侍従や侍女として連れてきているのは、ほとんど伯爵家や子爵家などの三男や三女という者たちだ。
つまりは貴族なわけで、侍従や侍女といえど学園に通う義務がある。
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当然、推しが肩身の狭い思いをするのを放置するようなルーナではない。
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もちろんルブラン公爵家には嫡子もいるし、カイルをルブラン公爵家の正式な子供にするわけではない。
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あちらがカイルに何もしてこなければ、だが。
ちなみに、ルーナの専属侍女のユリシーナは、ルーナたちより三歳年上で、入れ違いで学園は卒業していた。
濃紺のお仕着せを着たユリシーナは、ルーナたちの後ろを静々と歩いている。
学園に通う年齢ではない侍従や侍女は、授業中は待機室で待つ。
当初はカイルも、その予定だった。
だがルーナは、両親がランスロットのためにカイルに嫌な思いをさせることを気に病んでいることに気付いていた。
ルーナ自身は、カイルはそんな弱い人間ではないし、何かしてくるような馬鹿は自分が潰すつもりだったのだが、いずれ伯爵家を継ぐ可能性があるのなら、学園を卒業させておく方が良いと思い直した。
それゆえの、ルブラン公爵家との養子縁組である。
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だが他の婚約者のいる攻略対象に手出しするようなら、警戒しなくてはならない。
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