悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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目の保養はどちら?

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 学園に通うためのドレスが仕上がってきた。

 ルーナはもちろん、ランスロットとカイルも袖を通す。

 わずかな調整をするために、今日はデザイナーとともに針子も公爵家を訪れていた。

「あら?ランス兄様、素敵」

 サファイアブルーのジャケットとパンツ姿のランスロットに、アメジスト色のドレスを着たルーナが微笑みかけた。

 ルーナのドレスは、ドレスというよりもロング丈のワンピースのような形で、椅子に座りやすいデザインだ。

 シンプルな型のおかげで、黒のレースと、青いビーズの刺繍が際立っている。

 ドレスと揃いの扇のチェックをしていたルーナの姿に、ランスロットは頬を赤く染めた。

「る、ルーナこそ、大人っぽくて綺麗だ」

「ふふっ。ありがとうございます。カイルも良く似合ってるわ。やっぱりカイルは黒が似合うわね」

 ランスロットの隣に立つカイルは、侍従ゆえに執事服だ。
 だが、光沢のある生地を袖口に使ったり、銀刺繍がされていたりと、品良く仕上がっていた。

「ルーナお嬢様。もったいないお言葉です」

「ふふっ。眼福だわ」

 別の扇のチェックをしながら微笑むルーナに、ランスロットとカイルは顔を見合わせて苦笑した。

 どう見ても眼福なのはルーナだと、二人とも思う。

 サラサラとした銀髪に、透き通るような白い肌。

 シンプルなデザインのアメジスト色のドレスには、ところどころキラキラとした青いビーズ刺繍。

 黒のレースが大人っぽさを際立たせ、凛とした雰囲気を醸し出している。

 とてもじゃないが、愛馬で馬車を置き去りにしながら領地までやってくるお転婆娘には見えない。

「でも何故、黒なんだ?ルーナなら、白が似合うだろうに」

 同じドレスでも、黒のレースと白のレースでは、全く印象が違う。

 白ならルーナの美しさも相まって、聖女の如く見えるだろう。

 いや。ランスロットにとっては、ルーナは聖女だ。

 傷ついて人を憎み、醜く歪んだ自分を救ってくれた聖女。

 だからこそ白が似合うと続けたランスロットに、ルーナは曖昧な笑みを浮かべる。

「ランス兄様は大切な家族です。だから、傷ついていたなら手を差し伸べるのは当たり前ですよ。それに・・・聖女はから」

 そう。
聖女は、黒髪黒目で、平民の時に聖女の力を見出された少女。

 活発な性格で、明るくていつも笑顔で、攻略対象たちとともにあるうちに、聖女としてその力を伸ばしていき、やがて攻略対象の誰かと結ばれる存在。

 ルーナは心の中でそう呟くと、立ち上がった。

 それでも私はヒロインは嫌いだけどね、と心の中で付け足して。
 

 

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