悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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未来の公爵様

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 ルーナは両親が、フィオレンサ公爵家をいずれランスロットに継がせようとしていることに気付いていた。

 公爵家を継いだのは、公爵位を継ぐ予定のランスロットの怪我が酷く、誰かが中継ぎをしなければ公爵領が立ち行かなくなるからだ。

 だから、ランスロットにカイルを付けた。

 未来の公爵の側近になるも良し、カイルが望むならカサブランカ伯爵家を継がせても良い。

 愛人や下衆な父親たちを追い出して、真っ新になったカサブランカ伯爵家当主にカイルを据える。

 多少、王家の助力は必要だけど、交換条件に出来るモノは多くある。

 それに王家にとっても、嫡男を捨て愛人とその息子を取るような伯爵なんて、膿でしかない。

 ルーナはそう考え、カイルがどちらを、いやどんな道を選んでも良いように準備を怠らない。

 来月には、漫画の舞台である学園が始まる。

 ルーナは、そちらへの準備にも忙しい。

「え、あの、ルーナ。僕も何か・・・手伝うよ」

 漫画の中で、従妹を毛嫌いし憎しみの目で見ていたランスロットは、ここにはいない。

 自分を『俺』と言い、視線も鋭く、他人を寄せ付けない。

 唯一、ヒロインだけがランスロットの心の闇を溶かし温める存在になるのだが、ここにいるランスロットには、冷たい視線も他人を寄せ付けないオーラも、何もない。

 捨てられた子犬のようにルーナを慕う、少々残念な少年となっていた。

「大丈夫です。ランス兄様、お暇ならお勉強をなさっては?それか、カイルと手合わせでも。体力作りもなさいませんと」

 ランスロットとしては、罪滅ぼしを兼ねてルーナの力に少しでもなりたいのだが、ルーナは一顧だにしない。

 ランスロットを嫌っているとか、避けているとかではない。

 怪我が回復して、カイルが共にあるようになってから、ランスロットは何度かルーナと顔を合わせている。

 会話もし、かつての非礼も詫びた。
ルーナは謝ってもらうようなことはないと言っていたが、謝罪は受け入れてくれた。

「・・・分かった。邪魔しないようにカイルと手合わせする」

 ルーナの専属侍女のユリシーナの視線が痛くて、ランスロットは俯きがちに答える。

 ユリシーナもそうだが、ルーナの周囲にいる侍女や護衛は、ルーナ至上主義だ。

 何も語らなくても、視線が「お嬢様に手間をかけさせるんじゃない」と言っている。

「ふふっ。邪魔だなんて思ってませんわ。鍛錬の後でお茶をご一緒しましょうね。カイルもね?」

「はい、ありがとうございます。ランスロット様、参りましょうか?」

「ん」

 素直で可愛い、未来の公爵様である。
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