悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな

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従妹のためにできること

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 ランスロットは自分を恥じた。
きっと両親が生きていたなら、こんな恥ずべきことを口にした息子を叱咤しただろう。

 だがルーナは、ランスロットが謝罪する前に「ごめんなさい」と告げると帰ってしまった。

 ランスロットは、自分の言葉でルーナは傷つき、また酷いことを口にしたランスロットのことを嫌になったのだと思った。

 ルーナ自身は、そんなことをカケラも考えておらず、逆に知識がありながら助けることを出来なかった自分を責めていたのだが。

 それ以来、ルーナはランスロットの前に姿を見せようとはしなかった。

 何度も何度も、見舞いには訪れていながら、だ。

 当時怪我の酷かったランスロットは、ベッドから起き上がることすら出来なかった。

 だから、ルーナが部屋を訪れてくれないと会うことなど出来なかったのだ。

 何ヶ月も会えないまま謝罪も出来ず、ランスロットは治っていく体と対照的に心を病んで行った。

 両親が死んだのはルーナのせいじゃなく、のせいなのだと。

 自分を責め始め、挙句には両親は公爵令息に相応しくない自分を殺すために馬車の事故を起こしたのだと。

 そんな愚かな考えにまで及ぶようになった。

 誰が違うと言っても届かない深い闇に沈み始めたランスロットの元に、一人の少年が連れて来られる。

 青色の髪と、同じ色の瞳を昏く沈ませた少年。
 それがカイルだった。

 どうやら、ランスロットの世話をする侍従として連れて来られたらしい。

 カイルと過ごすうちに、カイルの事情も知れた。

 伯爵家の正統な嫡男なのに、愛人の息子に跡を継がせるからと勘当されたということ。

 不幸自慢ではないが、辛いことがあるのは自分だけではない。
 そう気付けた頃、ルーナに対する申し訳なさが復活した。

 平民として放逐されたカイルは、教会に身を寄せるしかなかった。

 父親である伯爵は、大した金も持たさずにカイルを伯爵家から追い出したらしい。

 教会に身を寄せて三日目。
一人の貴族がカイルの身元を引き受けると言ってきた。

 それがフィオレンサ伯爵。
亡き兄の後を仮に継いだルーナの父親だった。

 叔父シリウスの話では、カイルをランスロット付きにするよう叔父に進言したのもルーナらしい。

 ルーナにとってカイルは、何やら特別な存在らしいとシリウスは言っていた。

 事実、ルーナは馬車で丸一日かかる王都から、よく公爵領を訪れていた。

 ランスロットとは顔を合わさないようにしていたようだが、家令のジェームズから報告は受けていたようだ。

 酷いことを言ってしまったから、嫌われてしまったのかもしれない。

 それでも気にかけてくれている従妹のために何ができるのか、ランスロットは考えるようになった。
 
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